カタカナ英語でカラオケは歌えない
●rock and rollはロックン・ロール
カラオケ好きの友人がこんな不満を言っていた。「カラオケで洋曲を歌おうとすると字がはみ出てしまう」
カラオケで、モニター画面に出てくる歌詞を追いかけているうちに曲の方が先に終わってしまうことを言っているらしい。
カラオケの画面では、英語の歌詞にカタカナのルビがふってある。英語の歌詞を見て歌うのではなく、ルビのカタカナの方を見て歌っていると、曲の速さにコトバが追いつかず、歌詞を歌い終わらないうちに曲が終わってしまう。これは、英単語の発音に不慣れで、たんに舌が速く回らないというだけの問題ではない。
英単語はスペリング通りに発音されないことがよくある。英単語の音は、消えたり、次の音とリンクしたり、溶け合ったりしている。
rock and rollは、スペリング通りにカタカナをふると「ロック・アンド・ロール」だが、実際の発音は、「ロックン・ロール」で、「アンド」は「ン」に縮まっている。
rock and rollは3語だが、発音上はrockn rollの2語になる。実際、英語の歌詞では、よくrock’n rollと表記されている。
●itの発音は「イ」
サンシャイン3(平成28年度版)PROGRAM 1-1にこんな会話文が載っている。実際に、以下の会話文を読んでみれば、自分がカラオケで洋曲がスムーズに歌えるかどうかが占える。カタカナ読みでは洋曲は歌えない。
That’s a nice picture.
My father took it.
Where was it taken?
It was taken in Hokkaido.
①That’s a は、「ザッツ・ア」→「ザッツァ」。
②took itは、「トゥック・イット」→「トゥッ・キッ」
③was itは、「ウォズ・イット」→「ウォズ・イッ」
④It wasは、「イット・ウォズ」→「イ・ウォズ」
①では、tsとaが連結してツァになる。
②③④では、itのtは言ったつもりぐらいで、実際は消えてしまう。「イット」ではなく、「イッ」or「イ」になる。
NHKのラジオ英会話(2017年4月4日)でも、こんなセンテンスがとり上げられていた。
I got some good shots! 「何枚かいいショットを撮ったわ!」
tやdのあとに子音が続くと、tやdの音は弱まったり消えたりする。したがって、発音は:
アイ・ガッ・サム・グゥッ・シャッツ
●同じ歌を300回聴く
カタカナ英語の発音では、洋曲は歌えないが、逆に言えば、洋曲を練習すれば、カタカナ英語を矯正できることになる。知らない音は聞き取れないから、発音を矯正すればリスニング力が向上する。
松澤喜好氏は、著書の『英語耳』と『英語耳ドリル』のなかで、英語のリスニング習得に、洋曲のマスターをすすめている。
- 歌を徹底的に繰り返し聴くと、生きた発音とリスニング力が身につく。
- 学習の初期段階で正しい発音を習得することが何よりも大事。その後の学習効率は劇的に向上する。
- オウム(parrot)に、人の言葉を覚えさせるには2,000回その言葉を聞かせる必要がある。そうすると、オウムの脳の中に音に反応する部分ができる。1つの単語が言えるようになったオウムは、次の単語は200回の練習で覚えてしまう。さらに繰り返すことにより、音に反応する能力がどんどん進化する。
- 同じ歌を300回聴く。何度も繰り返す理由は、身体に染みついているカタカナ発音を徹底的に取り除くため。
- 1度リスニング100%を体験すると、別の題材でもリスニング100%を再現しやすくなる。学習能力は繰り返しによって質的に進化していく。
- 4年間で1,500人の大学生の発音を指導。曲の実技テストでは、発音がすっかり変わった生徒が続出。空港で英語のアナウンスができるほど上手くなる。
- 練習曲にはFly me to the moonと、本書からもう1曲好きな曲を選ぶといい。スローテンポなバラードや、バックの演奏がうるさくないものがいい。基本的には、好きな曲であれば何でもいい。
- 英語耳を作るには、発音に限れば、3ヶ月から6ヶ月でめきめき上達する。TOEICのリスニング程度なら、短期間でかなり得点が向上する。そこから完全な「英語耳」になるまでは、少し時間がかかる。読書によって、読解力や語彙力をつける必要があるので、これには5年ぐらいかかる。
- 歌を使う最大の理由は楽しいから。英語の学習は、年齢ではなく、英語にどれだけの楽しさを見つけられるかによって決まる。
●カラオケにチャレンジ
エルビス・プレスリー(Elvis Presley)の「監獄ロック」(Jailhouse Rock)に挑戦してみた。相当アップ・テンポなので、つっかえてしまうフレーズが何ヶ所もある。もう200回以上練習しているがマスターにはほど遠い。
それでも、カラオケ・ボックスで歌ってみると、かろうじて80点を超えるスコアが出た。ランキング・バトルの全国順位は1人中1位。だれも歌う人がいないということらしい。
かなりの早口なので、スピードを計算してみた。
Jailhouse Rock ― Elvis Presley
The warden threw a party in the county jail
The prison band was there and they began to wail
The band was jumpin’ and the joint began to swing
You should’ve heard them knocked-out jailbirds sing
曲の出だしは、37ワード、時間は10秒。1ワード0,27秒。1分に換算すると222ワード。
『英語達人塾』(斉藤兆史著)のなかで、英語の早口言葉が紹介されている。
Peter Piper picked a pocket of pickled pepper;
A peck of pickled pepper Peter Piper picked;
If Peter Piper picked a peck of pickled pepper,
Where’s the peck of pickled pepper Peter Piper picked?
35ワードで、制限時間は10秒とある。1ワード0,28秒。1分に換算すると214ワード。
ラジオ・ニュースも相当早口なので、こちらも計算してみた。
『英語は絶対勉強するな』(CD・Situation 3より)
…and there was an accident on Highway 99. A truck turned over blocking
west-bound traffic for about two miles. Drivers on Highway 99 west might want to
take local roads to work this morning. The current time is seven forty-three on this
sunny morning and the temperature is seventy-six degrees. The weather forecast
for later today is mostly sunny, with some clouds forming in the afternoon and a slight
chance of showers in the early evening. We’ll keep you updated with more traffic
and weather throughout the day, but now let’s enjoy forty-five minutes of
commercial-free rock and roll.
109ワードで、31秒。1ワード0,28秒。1分に換算すると214ワード。
1分間に210~220ワードが英語の発話の限界なのかもしれない。
●Fly me to the moon
ネット上で7歳の女の子が歌うFly me to the moonが紹介されている。別のサイト(Angelina Jordan)でも。
たった1分26秒で、耳に激震が走る。
2017年04月27日