国際教養大学
国際教養大学 Akita International University
(サンデー毎日 2011年 3/20号 要略)
●就職率は100%・卒業率は50%
授業はすべて英語で行われる。偏差値は東大、京大といった最難関大学に匹敵する。強みは国際的なコミュニケーション能力が養えること。専任教員の半数は外国人。新入生は全寮制で外国人留学生とルームシェアする。図書館は365日24時間利用できる。学生は1年間の留学を義務づけられ、卒業に必要な124単位のうち30単位を留学先で取らなければならない。4年での卒業率は約50%と卒業までのハードルは高い。卒業生の就職率は100%。
一般選抜の入試はA、B、Cの三つの日程が併願できる。センター試験はA日程が3教科、B日程が5教科、C日程が英語のみ。A、B日程の個別学力試験は英語と国語、C日程は英語の小論文のみ。今年(2011年)のA日程は40人の定員に対し24倍、B日程は50人に対し16倍、C日程は15人に対し32倍の応募があった。
今年の入試の都道府県別出願者を見ると、大阪を筆頭に愛知、北海道、東京、福岡など大都市圏が続いている。本学との併願先をB日程で調べたところ、多い順に大阪大、東京外語大、京大、東大、一橋大、北海道大。一流の国公立大志願者が併願している。しかし、偏差値の高い学生ばかりを集めても仕方がない、目標にしているのは国際的に活躍できる人材を育てることである。
●母国語の世界とは異なるもう一つの世界 (以下 中嶋嶺雄学長 談話)
日本の高級官僚は、その多くが修士や博士などの学位を持っていない。東大法学部を卒業したらすぐ省庁に就職しないとエリートコースから外れてしまう。入省後に選抜して国費で留学させるが、多くの国のエリート公務員は就職の際にすでに修士や博士の学位を持っているのが普通だ。
学生たちに求めるものは、何をおいても外国語のコミュニケーション能力、まず英語だ。グローバル化の時代、英語で発信できる力をつけないと「自分は英語ができない」というコンプレックスを抱えたまま生きていくことになる。勉強の仕方や大学での教育も、従来の文法や文学中心のやり方から脱却し、会話や聞き取りなどコミュニケーション重視にシフトしていくべきである。
本学では新入生にまず英語集中プログラムを受講させる。ネイティブ・スピーカーの教員が担当する、1コマ50分の授業を週に18~20コマ履修する。4カ月くらいたつと、イランや北朝鮮などの国際間題を英語で議論でき、CNNやBBCなどの国際放送が理解できるようになる。
国際社会では今や複言語主義が主流だ。本学でも英語プラス中国語、韓国語などの3言語習得を勧めている。一つ外国語を学ぶと、母国語まで洗練されてくる。日本人は外国語がしゃべれないんじゃない、しゃべらないのだ。一つの外国語ができるということは、母国語の世界とは異なるもう一つの世界が心の中に得られるということ。違った視点によるものの考え方や異文化理解の方法が養われる。
●『武士道』『万葉秀歌』
日本人が日本のことを知らなすぎる。国際教養大学では、新渡戸稲造の『武士道』や斎藤茂吉の『万葉秀歌』などを必読書として学生に読ませている。日本語の美しさと、その背景にある歴史や文化を学ぶ。留学中に外国で読ませるのだが、多くの学生はリポートに「こんなに日本語は美しいものだと初めて知った」と書いてくる。日本人であるというアイデンティティーと教養がなければ、いくら口先だけベラベラ英語が話せても国際社会では通用しないし、尊敬されない。
本学には欧米の大学に加え、香港大学やシンガポール国立大学、国立台湾大学、ソウル国立大学校、高麗大学校などアジアトップクラスの大学からの留学生がいる。優秀でよく勉強するし、活発に議論する。日本の学生にも「クリティカル・シンキング」(批判的思考)を求めたい。米国では自分の意見を発言しないと、周囲に取り残される。日本人学生の批判力や構想力は20年前に比べてぐっと落ちている。批判するには口先の言葉だけではなく、背景にある知識や教養が必要なのに、それがなくなってきた。お笑いやグルメ番組ばかり流すテレビの影響も大きい。
学んだことを絶えず血肉化する努力が必要だ。受験勉強は大学に入るための付け焼き刃に過ぎず、入学した瞬間に忘れてしまうのでは意味がない。知識は身につくまで、繰り返し叩き込むことが大事だ。
2012年06月11日