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 何をどれだけ音読したらいいのか ― 音読のすすめ (4)
        

●1度に音読する量は

 中3の教科書(開隆堂出版)の構成はつぎのようになっている。

プログラム 1 How Does Your School Chime Sound? ①②③ 
プログラム 2 Volcanoes in Japan ①②③

プログラム 3 The 5 Rs to Save the Earth ①②③ 
プログラム 4 Faithful Elephants ①②③④ 

プログラム 5 Sushi-Go-Around in the World ①②③ 
プログラム 6 Let's Talk about Things Japanese. ①② 

プログラム 7 What Is the Most Important Things to You? ①②③ 
プログラム 8 Clean Energy Sources  ①②

プログラム 9 Mother Teresa ①②③④ 
プログラム10 After Twenty Years ①②③④

 大部分の課は3つのセクションから成り立っていて、1つのセクションはおおむね80語前後の単語からできている。

 音読する場合、「1つの課」の音読をくり返すのがいいのか、それとも「1つのセクション」の音読をくり返すのがいいのかと迷う人がいる。音読する範囲を広く採れば負荷がかかり、狭く採れば負荷は減る。1つの課は1つのまとまったストーリーだが、中学の教科書の構成はうまくできていて、1つのセクションであっても、独立した内容になっている。私は1つのセクションの音読をくり返している。

 理由は、ページをめくるのが面倒だからだ。セクションが移るたびに、ページをめくるのは結構わずらわしい。1つのセクションだけならページをめくる必要がないので、左手に教科書を持ち、右手は指を折って回数を数えるのに使っている。教科書の余白に、10回音読するごとに「正」の字の1画を書いている。「正」の字が1個で50回の勘定になる。

 1回で音読するのは、1つのセクションだから、わずか80ワードほどの英文である。この量の英文をくり返し音読している。とりあえず50回程度をメドに音読し、それから次のセクションに移るようにしている。

 中学生なら、学校の授業進度に合わせて、同じ箇所を数十回、数百回とくり返し読めばいいが、高校生、大学生、社会人の場合は、同じセクションばかりを100回、200回と続けていると、かなりうんざりしてくるはずだ。1つのセクションにこだわらないで、適当に新しいセクションに移ったほうが、新鮮で飽きがこない。

 川島隆太教授も『朝刊10分の音読で「脳力」が育つ』(PHP研究所)のなかで、「長く続けることが脳の健康維持と脳力アップの秘訣。読むものは、自分のモチベーションが維持できて楽しみながら読めるものがベスト。脳は新しい刺激に喜んで活動するという特色を持っている。同じものをくり返し読むよりも、毎日違ったものを読むほうがいい」と述べている。

 音読は気合いや意気込みだけでは続かない。長く続けるコツは、小さい単位に分けて、ゆっくり、あせらず、毎日コンスタントに進めることである。切りのいいページや、切りのいい日である必要はない。教科書の目次を見て、興味のある箇所を今から始めたらいい。

●1ページ目から始めるな

 脳に刺激を与えるために、音読する箇所を毎日変えていくと、飽きがこない。今日は6-②、翌日は1-③、その次の日は9-①と、ランダムに読む箇所を変えていけば退屈しないで続けることができる。

 「初めから読まなくては」というのは、たんなる思い込みである。律義に最初のページから読まなくても、読みたいと思った箇所から始めればいい。とにかく始めることである。力んで取りかかると続かなくなり、挫折するのも早い。取っつきやすいところから気軽に始めたらいい。

 ヒルティは『幸福論』(岩波文庫)のなかで、「上手な仕事の仕方」(P13-P30)について書いている。その要点を拾い出してみよう。音読に限らず、勉強や仕事にも活かせるヒントが得られる。

 ・仕事に向かわせるものは、思い切ってやり始めることである。一度ペンをとって、最初の一線を引けば、それだけでもう事は容易になる。

 ・感興がわくのを待つ人がいるが、感興は、仕事の最中に最もわきやすい。やっているうちに、考えていたものとは違ったものになっていくのが普通である。

 ・事をのばさず、からだの調子や、気の向かないことを口実にせず、毎日一定の時間を仕事にささげることである。

 ・本を書くときは、序論や表題は後に回し、自分の最もよく知っている本論から始めれば、ずっと楽に書き始めることができる。同様に、本を読むときも、序文や第1章をぬかして読む方が、本はずっと読みやすい。

 ・もっとも容易なものから始めるといい。体系的でないために、順序の上では廻り道になるが、その欠点は時間が得られるということで償って余りある。

 ・仕事を容易にするとっておきの方法は、繰りかえすことである。いくどもやり直すことである。最初は輪郭がつかめるだけだが、二度目には細部が見えてきて、理解も明白になる。

●固定観念をはずせば読むのが速くなる

 ヒルティのいうとおり、私も最初のページから読み始めるのをやめてから、本を読むときのスピードと量は、格段に速くなり増えていった。とくに洋書の場合は、途中で投げ出したことはいく度となくあるが、序文や第1章をとばし、読みたい箇所から読むようになってからは、その距離は縮まり、洋書が身近なものになった。

 読むのが速くなり、量が増えるというのは、「とばし読み」や「ななめ読み」をするという意味ではなく、カバー・トゥ・カバーで読み切らなければならないという完璧主義の呪縛から解放されるからだ。どこからでも読み始められるようになり、どこででも止められるようになる。本がさきにあって、本に読まされるのではない。読む側がいて、読む側が主体的に本を読んでいるのである。

 途中で投げ出すことがあっても、いまでは後ろめたさも罪悪感も感じない。「途中で投げ出した」というのではなく、「必要なときに必要なものを必要なだけ得た」と考えている。本との関わり方はもっと自由な形でいいはずだ。本に向かうときのどこかフォーマルな気持ちを捨てると、本が提供してくれる世界は確実に拡がる。

 2週間ごとに図書館で本を10冊借りることにしているが、読み切れないことも多い。それでも、たった1行の文に出くわし、それが味わえただけでも借りてきた意味があったのだろうと考えている。そう納得すると本を読むときのmustが消え、本に対する接し方が柔軟になる。

 何かを吸収してやろうと読むより、形式ばった固定観念をはずし、力をぬいて読んだほうが、本は楽しくおおらかに読める。音読も、暗記してやろうなどと力んで読むより、無心になって淡々と読む方がいい。

●やりとげてきたものが一目でわかる

 ランダムに音読していると、どこを何回読んだかわからなくなる。音読表をつくると便利だ。

回 数50100150200-----------------------------------9009501000
1-①                           
1-②                           
1-③                            
2-①                             

  ※ 正=50回  

 音読した回数を視覚化すると続けやすい。空白のマス目が「正」の字でつぎつぎと埋まっていくのは快感である。やりとげてきたものが目に見えるからだ。前を見ることも大切だが、ときどき立ち止まって積み上げてきたものに目を向けることも大事だ。

 人間は、「あるもの」よりも、「ないもの」に注意が向きがちだ。「能力もない」「時間もない」「根気もない」となげいても始まらない。これまでやってきたことに目を向け、達成してきたものに自信と誇りをもつことで、前進するエネルギーが生まれる。さらに挑戦していこうという意欲につながる。空白のマス目にため息をつくのではなく、「正」の字を楽しむといい。自分にないものにバツをつけるのではなく、自分にあるものにマルをつけるのである。

 「ホーソン効果」という作業効率についての実験結果がある。人間は「見られている」と思うだけで、行動が変わり、「注目されている」と思うだけでがんばれるようになっている。末期ガンの患者は、見舞い客が多いほど長く生存するといわれている。

 「音読表」は、いわば自分が自分に注目することである。「音読表」に記入していくことで、自分が自分に「見られている」ことになり、自作自演の達成感や高揚感が生まれる。

2014年02月19日

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