勝浦英語塾では、英語指導歴30年のエキスパートが、大学受験英語を通して、30年後にも通じる、生き方と在り方とその方向性を伝えています。 

英標を縮約してみると

a:7717 t:13 y:10

『英標』の「訳文縮約」と「英文縮約」・全220題          

2014年08月01日

「縮約」の延長線上に「要約」がある          

●「縮約」は「要約」とは違う

 これまでホームページ上に載せていた『英標』の「要約文」をすべて削除した。

 「要約文」は前年に作成したものだが、読み返してみるとかなり粗っぽい書き方をしていることに気づいた。何のルールも設けずに自己流に要約していった結果、原文のもつ雰囲気や格調やリズム感のようなものはすべて失われ、ただ内容をコンパクトにまとめただけの文章になっていた。

 『英標』については、これまで20数年かけて数百回の音読と数十回の精読をくり返してきたので、その文章は熟知している。ピント外れの要約文になるはずがないと自負していた。そんな慢心から好き勝手に書いた要約文になってしまっていた。自分の言葉で書こうとするあまり、著者の思考の流れをさえぎったり曲げたり時には逆行させたりしていた。

 大野晋氏は『日本語練習帳』のなかで「要約」についてこう書いている。

 「縮約の次の練習です。それは400字の文をさらに縮めること。そうなるともはや原文の縮約では文章として整わなくなることが多く、要約としなければなりません。要約とは場合によって、文章そのものを読み手が作り変えなければならないものです。縮約と要約とは違う。……1字詰めるためには『しかし』を『だが』に変えるとか、『なければならない』を『べきだ』に変えるとかという工夫が必要になってくる」

 つまり大野氏のいう要約とは、削って削ってこれ以上は削れない状態にまで縮約してはじめて文章そのものを加工するということである。

●『英標』の縮約をやってみて

 『日本語練習帳』には、社説の30パーセント縮約の例が載っている。それにならって、『英標』の全220題を、それぞれ約3分の1に縮約してみることにした。ぴったり33パーセントに縮約するのは実際的ではないので、およそ3分の1の縮尺率をメドに、30パーセントから38パーセントの幅をもたせた。

 『英標を縮約するとばつぐんに力がつく』のなかで、「縮約はそぎ落とすだけなので、要約するよりも作業は楽である」と書いたが、実際は違っていた。字数の制限もあって、縮約のほうがはるかに難しい。ここはこう表現したほうがわかりやすいと思っても、原文の形を崩すことはできない。要約するのではなく、縮約なのである。できるのは「縮める」ことと「削る」ことだけであって、原文に手を加えることではない。

●訳文縮約

 『英標』の「訳文縮約」で、いちばん頻繁に削った箇所は、「ノデアル」だ。「ノデアル」を削っても、文意に変化は起こらない。「問題はなかったノデアル」は「問題はなかった」に、「かまわなかったノデアル」は、「かまわなかった」とした。『英標』は評論文が多いため、「ノデアル」が多用されていて、「ノデアル」は真っ先に削っていった。

 『日本語練習帳』のなかで「ノデアル」について大野氏はこう言っている。

 「ノデアルが繰り返し使われている。強めというよりは、著者が力んでいる、押しつけていると読む人もあるでしょう。私はある時期、『ノデアルを消せ』と自分に言い聞かせて、書き上げた原稿のノデアルをすべて消したことがあります。かえって文章がすっきりして強くなる」

 縮約で字数を減らしていこうとすると、「ノデアル」は、必然的に消していかざるをえなくなる。「ノデアルを消せ」とわざわざ言い聞かせなくても、「ノデアル」は使わないようになっていく。このことからも縮約の練習が優れた文章トレーニングであることが分かる。『英標』にもこんな文章が載っている。

 「英語を書くことは学問ではなく技術である。確実な規則というものはない。最も簡潔な表現法がいつでもいちばんよいといった原則があるだけである」(『英標』練習問題【21】縮約文)

●英文縮約

 『英標』の「英文縮約」では、まず次のような省略形を用いて語数を減らしていった。

 do not→don't / He is →He's / He would →He'd / He has come→He's come 

 また、一部を削っても同じ表現形式の変形だと見なすことができるものは、短い方に置き換えていった。

 for the sake of →for / in order to do →to do / so that→that

 また、andなどの等位接続詞がもつ連結機能から、同じ単語を2度くり返さなくても1語で代用できるときは1語とした。

 No animal and no savage → No animal and savage

 さらに、目的格の関係詞(whom, which, that)や接続詞のthatも削っていった。ただ、thatには、同格のthat、主格関係詞のthat、強調構文のthatがあり、英文法がよくわかっていないと、これらをむやみに削ってしまうとことになりかねない。それではセンテンスとしてなりたたなくなるので注意を要する。逆の言い方をすれば、縮約の練習をとおして、文法をベースにした英文構造への理解が深まるともいえる。

●縮約をとおして要約文が書けるようになる

 「素手でピラミッドの石を押し出すことは、シェークスピアの作品で、その詩人の述べていることの意味を変えたり表現をまずくしたりしないで、1つの語を取りかえたり位置を変えたりすることほど、困難ではあるまい」(『英標』練習問題【6】縮約文)

 名文は、ムダのない言葉で書かれているから縮約するには骨が折れる。とくに原文が短い場合は、絞りきった雑巾をさらに絞るように、どこをどう削ったらいいかお手上げ状態になる。もっともそれだからこそ文章修行なのだが。

 東大は、半世紀以上にわたって「要約問題」を出題し続けている。今年も、「英文の内容を80~100字の日本語に要約せよ」という問題が出ている。英文の語数は約300語である。一般に、「日本語の文字数」と「英文の単語数」の比率は3対1である。「80~100字に要約せよ」は「約10分の1に要約せよ」ということになる。早稲田大学文化構想学部では、英文を読んで英文で要約せよという問題が出ている。

 この種の要約問題は受験生が最も苦手とする出題形式であり、センター試験に代表されるマークシート方式の対極に位置する。マークシート方式で求められている能力は、瞬発力であり、スピードであり、条件反射である。答えがわからないときはエンピツをころがしても解答できる。

 要約文は、原文をゆっくりていねいに愚直なまでにくり返し読み込まなければ書けない。生きていくうえで、どちらの能力を身につけたほうがいいかは明らかである。

2014年09月01日

『英標』を縮約するとばつぐんに力がつく          

●縮約とは?

 『日本語練習帳』(大野晋著・岩波新書)に、文章の書き方の練習法が載っている。新聞の社説を縮約するという方法である。同氏の授業を受けた卒業生は、「あの縮約の授業が社会に出て一番役に立った」とのこと。同書にある縮約のやり方とその効用をまとめてみた。

 ①縮約とは、要約することではない。地図で縮尺というように、社説をおよそ30%に縮尺して、できるだけ原文どおりにまとめることをいう。

 ②句読点は1字分取り、途中に段落をつけ、改行する。

 ③縮約文は、ひとつのまとまった文章として読めるものでなくてはならない。

 ④自分の書いた縮約文を何度も読み返し、句読点の使い方、一つの助詞の使い方にも心をくばり、文章としてリズムを整えていく。

 ⑤縮約するには理解が不正確であってはいけない。未知の単語は辞書で確かめなければならない。その結果として語彙が増える。

 ⑥社説は扱う範囲が広いため、人生や社会を見る目の幅が広くなる。

 ⑦社説の縮約を30回も行うと、目が鋭くなり、かなり書けるようになる。

 ⑧文章には贅肉があることがわかり、意外と簡潔に的確にいえることが分かるようになる。

 ⑨縮約文は「文章の骨格」である。縮約という作業は「読む側」の作業だが、裏を返すと、「書く側」の心がけを示唆する作業でもある。

 ⑩「文章の骨格」は「論旨」「要点」と一致してくる。その文章が何をいっているのかをつかむ目が鋭くなる。

●縮約する方が、要約するよりも楽

 2014年6月20日付けの読売新聞に、高村薫氏の『楽観と無為の間で』と題するエッセイが載っている。論理的で納得のいく内容だったので、この文章を縮約してみた。原文は1399字で、これを400字になるように縮約してみた。

 「訪れているのだろうか」は「訪れている」に縮めて、ちょうど400字になるように制約を設けてみた。ぴったり400字にするには、一字一句、句読点にまでこだわざるをえず、縮約がすぐれた文章トレーニングであることがわかる。縮約はそぎ落とすだけなので、要約するよりも作業は楽である。段落末尾にある( )内の数字は各段落の字数を表す。

楽観と無為の間で

 時給1500円でも深夜働くアルバイトが確保できず、大手外食チェーンが次々に店じまいする、そんな時代が来ているらしい。(59)

 巷の学生たちが高額のアルバイトに見向きもしないほど豊かなはずはない以上、単純な人手不足では説明のつかない構造的かつ急激な変化が、この社会に訪れているのだろうか。(139)

 しかしながら、社会の大きな変化を肌で感じながらも、どこがどう、といった具体的な形はいっこうに見えてこない。それどころか、薄明るい景況感ばかりが全面に押し出され、私たちの気持ちを妙に浮つかせている。(100)

 だからだろう、新聞を開けば、誰しも政治や外交の抜き差しならない動きや、市井の凄惨な事件や子どもの虐待死などに悄然となるものの、その同じ人間が、新聞を閉じるやいなや速やかに日常生活に戻ってゆくのである。そればかりか、いまは初夏の行楽シーズンでもあるから、休日は人気の観光スポットはどこも大入り満員で、グルメに買い物にと私たちの気分も財布の紐も緩みっ放しである。(181)

 そういえば、消費増税前には私も含めて多くの人が暗い予想を立てたが、蓋を開けてみれば予想に反して緊縮ムードは一部に留まり、いわゆるデパ地下などの華やかさは少しも変わらない。一部の資産家を除けば平均的なサラリーマン家庭の可処分所得は確実に減っており、生活は厳しくなっているはずなのに、どこからか:手品のようにお金が湧いてくるのだろうか。(133)

 いや、お金はどこからも湧いては来ない。これはたんに、少なからぬ数の日本人が将来の備えて貯蓄することを止め、人生を楽観し始めた光景なのだと思う。割のいい飲食店のアルバイトに見向きもしなくなった学生たちも、特段の理由があるというよりは、きつい仕事を嫌うようになったことと、しゃにむに働いてまで買いたいものもない、ということだろう。(169)

 こうして好景気のゆるい気分だけが社会を覆う一方では、そこはかとない不安が私たちの心を蝕んでいるのか、社会生活や家庭での人間関係や、ソーシャルネットワーク上のちょっとしたすれ違いが、、一気に膨らんだり爆発したりして、社会を間断なくざわつかせてもいる。たえず慰みに生贄が作り出され、消費され捨てられる、そうした膨大な非生産的時間に押し流されるまま、私たちはシニカルなクールさを装って生きているのである。(205)

 そこには、たとえば同盟国のために戦争ができる国になることについての、真剣な自問自答もない。代わりに、まあ仕方ないんじゃないのと控えめな指示を示してすませるのだが、実際それ以外に為すすべもないのが本音っでもあろう。(108)

 またそこには、考えること自体に背を向けている自分自身への、少々投げやりな自嘲や開き直りとあきらめが張り付いているのだが、これが従来とは趣が違う点である。ありていに言えば、一生活者といえども完全に無関心ではいられない、なにがしかの切実さが確かに時代の空気のなかにあるということだろう。(145)

 現在の自分の生活がひっくり返るような大事は起こらないという楽観と、仮にそうでなくとも運を天に任せるほかない無為の間で、私たち日本人は今日も浮遊し続けている。(80)        

(計1399字)

楽観と無為の間で(縮約)

 構造的かつ急激な変化が訪れている。具体的な形は見えてこない。薄明るい景況感が全面に押し出され、私たちの気持ちを浮つかせている。(65)

 政治や外交や凄惨な事件に悄然となるものの、速やかに日常生活に戻ってゆく。グルメに買い物に財布も緩みっ放しである。(58)

 生活は厳しくなっているのに、手品のようにお金が湧いてくるのだろうか。これは人生を楽観し始めた光景なのだ。しゃにむに働いてまで買いたいものもない、ということだろう。(84)

 好景気のゆるい気分だけが社会を覆う一方で、不安が私たちを蝕んでいる。人間関係のちょっとしたすれ違いが、社会をざわつかせてもいる。消費され捨てられる膨大な非生産的時間に押し流されるまま、生きているのである。(104)

 そこには、考えること自体に背を向けている自分への、投げやりな自嘲や開き直りとあきらめが張り付いている。(46) 

 大事は起こらないという楽観と、運を天に任せる無為の間で、私たちは浮遊し続けている。(43)                

(計400字)



●「訳文縮約」から「英文縮約」へ

 実際に縮約してみて、縮約の練習は、英文の「読み」「書き」の訓練としてもそのまま使える方法だと直観した。

 英文を縮約するには、英文の意味を正確に理解しなければならない。知らない単語や熟語はいちいち辞書で調べなければならないし、英文の構造を正確に読み解かなければならない。漫然と受動的に読むのではなく、能動的に読み込まなければ縮約文は書けない。英文の縮約文を書くということは、英文のリーディングとライティングの基礎訓練にはもってこいである。

●縮約のテキストは?

 それでは英文の縮約にはどのようなテキストがいいのか。身近な教材として思いつくのは『英標』である。『英標』には英米の著名な作家の文章が220編収められている。内容は、「自伝」「小説」「哲学」「評論文」と多岐にわたり、広く社会や人生を見る目を養うのに適している。

 それぞれの英文には訳文が付いているので、「訳文」と「英文」の縮約を同時に平行して行うことができる。訳文の語数は、短いものは数十字、長いもので千数百字と、多少のばらつきはあるものの、220題は、縮約の練習問題として十分な数である。

 以下は、『英標』の練習問題【49】を30%に縮約したものである。まず先に「訳文縮約」を行い、次に「英文縮約」を行うことにした。「英文縮約」は、30%の縮約にはこだわらず、仕上がった「訳文縮約」をベースに「英文縮約」を行った。そのため、『英標』の縮約では、「訳文縮約」を先に掲げてある。

―原文―

【49】世間から理解され報いを受けることを当てにする独創的な芸術家は愚か者である。なるほど、彼は、ひょっとした風の吹き回しで、同情ある、すぐれた批評家にめぐりあい、運よく見出されることもあるだろうし、自分のやらないことのために賞賛されたり報酬をもらったりすることもあるだろう。だがしかし、彼が独創的であるためにかえって、普通の場合には、理解されるのに長い時日を要するのである。それは彼が自分の作品を創作しなければならないばかりでなく、作品の愛好者層もつくり上げなければならないからである。  (200字)

The original artist who counts on understanding and reward is a fool. He may have the luck to be found out by some wind of chance which blows a sympathetic critical talent in his direction; he may be admired and rewarded for what he does not do, but for the very reason that he is original, he will, in the ordinary course of things, wait a long time to be understood. For he has to create not only his work but his public. (84語)

―縮約文―

【49】理解されることを当てにする独創的な芸術家は愚か者である。彼が独創的であるために、理解されるには長い時日を要するのである。(60字/200字=30%)

The original artist who counts on understanding is a fool. For the reason that he is original, he will wait a long time to be understood. (26語/84語=31%)



●内容が味わえる

 『英標』の精読は骨の折れる作業である。ふつうは英文構造を分析的に読むのに手一杯で、内容を味わうところまでは手が回らない。しかし、縮約してみると、贅肉がそぎ落とされ、何が言いたい文章なのかがはっきりする。

 【49】の縮約から、たとえば、独創的な画家がいて、作品が売れずに生活に窮することがあっても、それは当然のことだろうと納得がいく。これを生き方に当てはめれば、個性的な生き方は、生やさしいことではなく、世間からつまはじきにされることもあると理解できる。また、「個性尊重」という教育のスローガンも、言葉の響きは美しくても、実践となるとスムーズにはいかないだろうと容易に想像できる。

●英語力と日本語力は連動している

 入試英語がマークシート方式にシフトして以来、日本語を書く機会は激減している。まして、英文を書く機会など皆無である。実際に書く機会が減れば、言語運用能力は衰えるばかりである。速読やパラグラフ・リーディングと称する読み方で、なんとなく読んだつもりにはなれても、日本語訳を書けば、理解しているかどうかははっきりする。紙に書けば、誤訳はごまかせない。

 英語と日本語の運用能力は相関関係にある。一例を挙げておこう。冒頭に挙げた『日本語練習帳』の中に、こんな練習問題が載っている。著者の大野晋氏は日本語学の大家である。同氏はこう言っている。「こういうことは学校では一度も教えない。大人でもむずかしいと感じる人が少なくない。早い段階でこれを学んでおくと、日本語のセンテンスの把握がしっかりする」

 問い:次のセンテンスのガは、どの言葉までをくっつけてひとまとめにしていますか。

 a 世界でこの芸できる犬はわが愛犬のみであろう。
 b 彼病気をして医者にかかった話は聞かない。

 答え:

 a [この芸ができる]犬
 b [彼が病気をして医者にかかった]話

 この問題は、英文を読む力があれば難しい問題ではない。英訳すれば次のようになり、それぞれ、aは「関係詞節」、bは「同格that節」であることがわかる。

 a a dog [who can do this trick]
 b the story [that he got sick and went to see a doctor]

 『英標』の「訳文縮約」と「英文縮約」を行えば、両言語の運用能力は確実に向上する。両言語をなんども往き来することで、英語と日本語の特性がより深く理解できるようになる。

2014年07月01日

powered by Quick Homepage Maker 4.71
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional