10分の音読で元気が出る
主婦のEさんは、1990年ごろ高松で、高校生と一緒に、私から受験英語を学んでいました。その後、ご主人の転勤に伴い埼玉県に移り住みました。
Eさんは、この4月から、伊藤サムさんの『現代英語』(NHKラジオ)を聞き始めました。きっかけは、テキストの「高校生からはじめる」というキャッチコピーに惹かれたからだそう。テキストのニュース英語の音読を、数十回から百数十回くり返しているそうです。
Eさんが、「音読」を双子の娘さん達とどのように行ったかを、以下にまとめてくれました。
ふつう「音読」というと、数回から十数回、声に出して読むことだと思っている人が多いようです。しかし、Eさんや、その娘さん達の音読回数は、文字通りケタが違います。
Eさんの文章には「暗記」という言葉はどこにも出てきません。しかし、Eさんの娘さん達が、テキストを暗記しているのは当然のことです。ひたすら音読することで、暗記を通り越しています。単に暗記する以上に、テキストの英文が身体に染み込んでいるはずです。
力ずくで覚えた英文は硬直化し自由が利きません。一方、身体で覚えた英文は自動化され、状況や場面が違っても自由に対応できます。
さらに、音読を通して、英語という異質な外国語に、何度も能動的に向き合ったことで、日本語という母語の言語能力が磨かれたはずです。それが他教科の学習にも好影響を及ぼしただろう考えられます。
E・K 主婦 埼玉県在住
1992年のことです。双子の娘達が中学1年生の夏休みに、かつうら先生から「只管朗読」のコピーが届きました。たいへん興味を持ってコピーを読みました。そこから、娘達といっしょに1日1回、10分間の英語の音読が始まりました。
娘達はあまり乗り気ではなく、「それだったら、速く読んで早く終わらせて、早く遊ぶことにしよう」と、しぶしぶ承諾してくれました。タイマーを10分間にセットして、学校で習った所を、母親と娘の3人でいっしょに音読しました。
次の日にタイマーを持って娘達の所へ行くと、「えーえー、またーあ」と言うので、「5分間だけ、いいでしょ、すぐ終わるから、ねッ」と、納得させました。
定期試験の前でもないし、夏休みだし、音読のモチベーションは上がりません。それでも、音読の習慣が身につけばいいと思っていました。
回を重ねていくうちに、娘達の読み方に積極性が出てきました。5分間のタイマーが鳴っても止めません。切りのいい所まで、集中して読むようになりました。
さらに続けていると、今度は、「音読すると元気が出る、身体がポカポカしてくる、モヤモヤが吹き飛ぶ」と言いだしました。少しずつ時間も伸び、1日10分の音読が定着するようなりました。学校で習った所は50回ぐらい読むようになりました。
まだ学校で習っていないレッスンも読み始めるようになり、母親の私が先に手本を示し、娘達はそれを2回リピートします。1文が長いときは、2つに分けて、慣れてから1文にしてリピートしました。それを3人で音読します。
まだ学校で習ってない箇所なので、音読のスピードは遅くなります。娘達が「これじゃあ『音読表』が伸びて行かない」と言いだしました。「音読表」は、5回読むごとに正の字でマス目を埋めていく表のことです。この音読表を見ると、これまでの音読回数が一目で分かります。正の字が増えていくことを娘達は楽しみにしていました。
「そうね、でも、まだ学校で習ってない所がこんなに上手に読めるようになってきたのだから、あなた達はすごいよ」と励ましました。2学期の終わりには、3学期までの1年生の教科書を全て読み終えてしまいました。
最後まで読み終えた同じ教科書を、またレッスン1から繰り返しました。今度は、時間内に何回音読できるかを競いました。
「あなたたちすごく上手に読めるようになったから、今度は2人だけで読んでみて。お母さんはタイムを計るからね」
最初はレッスン5まで、次にレッスン7までと、徐々に時間内に読める音読回数が増えていきました。タイムを計るようになると娘達はすごくおもしろがって真剣に音読するようになりました。競争意識も働いて、音読のスピードがどんどん上がっていきました。
すると今度は「今日はレッスン○○まで、○○回読もう」とか、「今日は後半を重点的に読もう」とか、「思い切って最後まで通しで読もう」とか、自分達で計画を立てて音読するようになりました。
成績も、中2の2学期に、英語だけでなく主要5科目がそろって急激に上がり、中3の1学期には、2人とも学年で10番以内に入りました。長女は大宮高校から上智大学(国際関係法学科)へ、次女は浦和一女から東京外国語大学(ロシア語学科)へ進みました。2人とも中学、高校と塾へは行っていませんから、音読の効果は絶大だったと思います。
音読の回数を参考までに記しておきます。中1テキスト450回、中2テキスト800回、中3テキスト300回。中3は、受験勉強があり少し減りました。
中学生という成長の著しい時期に、「只管朗読」のコピーを送って下さったかつうら先生にはたいへん感謝しています。娘達は音読を通して、英語の勉強だけでなく自主的に物事に取り組む姿勢も学んでいったと思います。
2021年7月1日