オンライン英会話のすすめ(9)
●DNAはクオリティが高い
レアジョブの教材DNA (Daily News Article)は、毎日アップデイトされる。
まず、Unlocking Word Meaningsで5つの単語の「意味」と「例文」が紹介される。次に、本文のニュース記事が続く。最後に、ニュース記事に関連したDiscussionのトピックが4題のっている。
本文には音声ファイルがついている。ループ(loop)状態になっていて、自動的に再生される。リスニング教材として便利だし、シャドーイングにも利用できる。この音声ファイルは、クリックするだけで、Walkman等の他のメディアにも簡単にダウンロードできる。この音声ファイルを手本にすれば、自己流の音読では気づかなかった発音のミスや抑揚のクセが修正できる。
本文のニュース記事の長さは300語弱。長すぎず短すぎず、ほどよい分量。難易度は英字新聞ほど難しくはなく、政治経済に偏ってもいない。気軽に読める”Reader’s Digest”を思い出す。
これだけクオリティの高い教材を、レアジョブは365日、1日も欠かさず配信している。作成には相応の時間がかかり、日比両国の相当数のスタッフが関わっていることが想像できる。しかも、DNA は会員に限定することなく一般にも無料公開されている。同社の教材に対する自信ともとれるし、会話力向上のための社会貢献ともとれる。
DNA(Daily News Article)は、本ウエブサイトの縦列「メニュー欄」に掲載。アクセスしてみれば、オンライン・レッスンで会話力がどのように向上するのか、そのメソッドの一端を垣間見ることができるだろう。
●予習を含めて2時間くらいしゃべっている
DNA のUnlocking Word Meanings(単語の意味を解き明かす)に載っている5つの単語の「意味」と「例文」をそれぞれ10回ずつ暗唱することを日課にしている。暗唱は、「意味」に10~15分、「例文」に10~15分かかる。
ニュース記事を精読した後、シャドーイングを行うが、純粋なシャドーイングではない。テキストを見ながら行っている。parallel readingとかshadowing with textという言葉があるくらいだから珍しいことではない。
シャドーイングは難しい。純粋なシャドーイングにこだわって負荷をかけ過ぎると続かなくなる。緩すぎても面白味に欠ける。私には「テキスト付きのシャドーイング」がちょうどいい。それでも十分に効果は上がっている。
目で文字を追い、耳で音をキャッチし、口で音を発する。自分の口から出た音を、空気伝導(air conduction)と骨伝導(bone conduction)で、再び自分に向かってフィードバックしている。なお且つ脳は記事の内容も理解する。単なる黙読に比べたら数倍の効果があると考えられる。
振り返ると、レッスンの準備には、暗唱、シャドーイング、それに内容理解が含まれる。目、耳、口のフィジカルな器官が総動員され、そのうえ脳の認知機能も働く。脳細胞はフル活動している。脳機能のマルチ・タスク(同時並列処理能力)ぶりに改めて驚く。
単語の暗唱に20分~30分、本文の精読に10分~20分、本文のシャドーイングに30分、本番のレッスンが25分。さらにdiscussionの課題について模擬演習をしたり、全文を英文要約してみたり、録音した本番のレッスンを後で聞き流したりするのも学習の一部になっている。こうした時間を全部合わせると2時間あまりになる。
2時間はかなりの時間に聞こえるが、結果として2時間かかるのであって、ノルマとして2時間が先にあるわけではない。2時間という枠を前もって決めてしまうと、毎日のレッスンがキツくなる。だから2時間にはこだわっていない。2、3回テキストに目を通しただけで本番に臨む日もある。ただ、十分に準備をして臨んだ方が気持ちよくレッスンを受けることができるから、ルーティン・ワークはめったに崩さない。とにかく休まずに続けることを最優先事項にしている。
●こういう計算が成り立つ
DNAの「本文記事」、および単語の「意味」と「例文」に使われている語数を数えるとおよそ300語。これを10回繰り返すと、単語の総数は延べ3,000語。これを1ヶ月続けると延べ9万語になる。
洋書のペーパーバックが1ページ当たり300語。総ページ数が200ページだとすると、ペーパーバック1冊の総語数は6万語。
9万語÷6万語=1.5。毎月1.5冊の洋書を読んでいることになる。1年で18冊、10年で180冊。
ジャパン・タイムズ社の元編集局長の伊藤サム氏は、積み上げたら身長の2倍の高さになる量の洋書を読めとすすめる。「単語の意味は、文中にしかない。たくさんの文に接する中で、同じ単語をいろいろな角度から何度も接して、その意味を直感的につかみ取ると、正確な単語力がつく」(『英語は、やさしく、たくさん』伊藤サム著)
ペーパーバックの1冊の厚さが2センチだとする。厚さ2センチの本を180冊積み上げると360センチになる。身長が180センチなら、ちょうど身長の2倍になる。
洋書を多読してプロの英語力をつけるメソッドがある。そこでは「目指せ100万語」という標語を掲げている。9万語(1ヶ月)×12ヶ月×10年=1,080万語で、100万語は軽く突破する。
『天才! 成功する人々の法則』(マルコム・グッドウェル著・講談社)では、だれでもプロになれる1万時間の法則を紹介している。2時間×30日×12ヶ月×10年=7,200時間。1万時間にはやや欠けるが到達率は72%。
●「英語」だけでもメシが食っていける
オンライン英会話で、DNAに毎日2時間取り組み、それを10年続ければ、洋書180冊分、語数にして1千万語を超える読書量に匹敵する。時間は7,200時間。たいへんなように思えるが、ルーティン化して習慣にしてしまえばどうということはない。毎日やっていれば、自然に生活のリズムの中に組み込まれていく。
あなたが今18歳なら10年後は28歳。これは、高校卒業後、オンライン・レッスンを10年続けると、28歳で英字新聞の記者並みの英語力を身につけることができることを意味する。とうぜん会話力も含まれる。「英語」だけでもメシが食っていけることを意味する。
書店で目にする、これでもかと並ぶ、そしてこれからも並び続けるだろう「英会話」の本は不要なものとなり、「英会話」にケリをつけることができる。
言葉は生活の一部だから慣れるのが一番。英語をしゃべることを習慣化すればいい。オンライン英会話は、毎日の予約さえ怠らなければ、先生とのインタラクティブ(interactive)なレッスンで事が運ぶ。気がつけばプロの世界に足を踏み入れていることになる。
2019年9月24日