オンライン英会話のすすめ(2)
●話したくてうずうずする
受講している『レアジョブ』のオンライン英会話では、ニュース記事をテキストに使っている。記事は、Daily News Articleの名で、365日、音源付きで『レアジョブ』から毎日配信される。
一般に、英文記事を毎日欠かさず読もうとしても、なかなか続かない。続かない理由はいくつかある。せっかく読んでも、記事の内容を分かち合う相手がいない。関心のない分野の記事は読む気がしない。また、英文記事など読まなくても、生活に困ることは何もない。こんな理由から、英文記事を毎日読むことを習慣化するのはむずかしい。
その点オンライン英会話では、目の前のスクリーンに先生がいる。同じニュース記事を共有しているので孤独にならない。むしろ、早く話したくて待ち遠しくなることがある。孤独で根暗な学習が、フィリピン人の先生との明るい交流の場に変わる。
●質問されるから脳が活性化する
レッスンは毎朝8時00分に受けることにしている。決まった時間に受講した方が、生活の一部になり習慣化しやすい。
レッスンは、”How are you?”で始まり、その後、挨拶代わりのやり取りが続く。「今日はこの後、何するの?」「連休は何か計画はあるの?」「週末は何してたの?」「朝食は何を食べたの?」「今日の天気は?」
こんな軽い会話を交わした後、ニュース記事に移る。記事は300語ほどで、7、8パラグラフからなる。2、3パラグラフずつ音読するように指示され、読んだパラグラフについて質問される。内容を把握していないと答えられない。読み込んでいないと恥を掻くから予習は欠かせない。
慣れてくると、「この先生なら、こんな質問をしてくるだろう」と、予想できるようになる。「やっぱりそう来たか」と、読みが的中したときは、余裕が生まれる。直球で返しても面白くないので、変化球で応じることもある。遊びで返すと、遊びで返ってきて、会話が弾む。
●質問には、理解を深める力がある
記事には、あらかじめ質問が設定されている。
“Video Game Addiction a Mental Disorder, WHO Says”(2018/07/26)の記事には、以下の質問が付いている。何もないと、ただボーッと読むだけだが、問いがあるので反射的に答えを考え始める。
・ゲーム依存症を精神疾患とするWHOの決定に賛成か?
・他のIT関連の精神疾患にもWHOは注意を払うべきか?
・ゲーム会社にゲーム依存症の責任はあると思うか?
・ゲーム会社は依存症患者を救うのに何ができると思うか。
このような質問には、前もって大学ノートに回答を書いていた時期があった。多いときには4ページ分の英文を書いていた。しかし、書いておくと、書いた通りにしゃべってしまい、会話に柔軟性がなくなるのに気づいた。今は、余白にポイントをメモする程度にとどめている。
記事の内容は、「ビジネス」「科学技術」「健康」「教育」「家庭」「医療」……と多岐に渡り、自分の好みに偏ることなく、さまざまな分野の語彙を身に付けることができる。
●単語の習得は、例文が作れるかどうかで決まる
記事の初めに、”Unlocking Word Meanings”(単語の意味をひも解く)と題して、毎回、記事の中から5つの新しい単語が紹介されている。
――”Research Links Too Much Protein to Heart Failure”より(2018/07/12)
1. amplify (v) – to increase or intensify
Example: Eating lots of sweets amplifies your risk of diabetes.
2. dilate (v) – to expand or widen
Example: Eyes dilate in the dark so that they can see better.
3. by-product (n) – secondary result or product
Example: Fuel produces energy, but it also produces smoke as a by-product.
4. strain (v) – to injure something because of overwork
Example: I strained my shoulders from playing tennis every day.
5. exacerbate (v) – to worsen
Example: Not taking medicine exacerbated her illness.
これまで300回近くのレッスンを受け、受講した先生のかずは数十人にのぼる。通常は、記事の内容に関する質問だが、先生次第でいろんな質問が飛んでくる。あるとき、こんな指示を受けた。「上記の単語を使って、それぞれ独自の英文を作れ」
いつもと勝手が違い、戸惑ったが、なんとか切り抜けた。それ以来、リストアップされている単語や、なじみの薄い単語は独自に例文を作るようにしている。
あるとき、peripheral vision(周辺視野)の意味がわからないでいた。先生は、大きな眼を思い切り見開き、両眼の瞳の部分を目尻の端いっぱいに寄せ、顔の表情全体を使って、「周辺視野」の意味を伝えようとしてくれた。理解した旨を、例文を使って応じると、満面の笑みを浮かべて”Good job!”と返ってきた。”peripheral vision”の意味は、おそらく生涯忘れないだろう。
例文を作る際は、オンラインの辞書を活用している。自分の作った例文が正しいかどうかは、辞書の例文と照らし合わせて検証できる。一番よく使う辞書は、『LONGMAN』。例文が豊富で、各例文には音声ファイルが付いている。
毎回この形式で新しい単語に触れているうちに、今ではこの形式が単語を覚えるときの自分の型になっている。単語帳は作っていない。 単語帳は作っても、作ること自体が目的になり、これまで上手く活用できたためしがない。
例文を作ってみることで、味気ない単語の暗記が、クリエイティブな活動に変わる。忘れても気にならなくなる。忘れるたびに、何度でも例文を作ればいい。作れば作るほど自分のものになる。忘れることがストレスでなくなる。
「忘却が悦びに変わる」は、眉唾に聞こえるかも知れないが、実行してみれば、その真偽のほどはわかる。
①vain:虚栄心の強い
②I have an aunt. She always shows off her imported brand handbag. She is a vain woman.
①か②か、どちらが覚えやすいかは言うまでもない。
●入試問題も、例文が作れるかどうかで解ける
次の英文から、5個の正しい英文を見つけ出せ。(東京大学・1972年・抜粋)
誤①You must inform their arrival to him at once.
誤②All the money was robbed of the poor old woman.
誤③He was willing to pay the service they had given him.
誤④I suggested him to come and stay with me, but he did not.
それぞれ、inform(知らせる)、rob(盗む)、pay(支払う)、suggest(提案する)の動詞の使い方が問われている。単語の意味を知っているというだけでは埒(らち)があかない。語彙の運用能力まで身に付けていなければ正答は見えない。たんなる英単語の意味の暗記に終始する能天気な受験生に警鐘を鳴らす良問と言える。
正①You must inform him of their arrival at once.
正②The poor old woman was robbed of all the money.
正③He was willing to pay for the service they had given him.
正④I suggested to him that he come and stay with me, but he did not.
●文法の理解度も、例文が作れるかどうかでチェックできる
自分の英文法の理解度を知るには、例文を挙げてみるといい。
・仮定法過去完了の例文を挙げよ。
・現在完了の例文を挙げよ。
・現在完了進行形の例文を挙げよ。
・分詞構文の例文を挙げよ。
・使役のhaveを使った例文を挙げよ。
・同格thatの例文を挙げよ。
・強調構文の例文を挙げよ。
・ifを使った例文を3つ挙げよ。
文法に自信があるなら、こんな例文にもチャレンジしてはどうか。
・仮定法過去完了と仮定法過去が組み合わさった例文を作れ。
・ifを使わない仮定法の例文を挙げよ。
・to不定詞の動作主体を表す例文を4パターン挙げよ。
・動名詞の動作主体を表す例文を2パターン挙げよ。
「例文作り」は、英文をたえず口にすることになり、語彙力、文法力を向上させ、作文能力を高めてくれる。模範例文を自分で作れるようにすることは、英語学習の万能薬と言える。
2018年8月5日