水戸黄門は旅をする
O・N 通信受講生・松山市在住・58歳
●語感とは
友人を通じて、かつうらさんと出会ったのは30年ぐらい前だった。私が英文科を卒業しているということもあり英語の話になった。そのとき、こんな話をしてくれた。
「水戸黄門は旅をする」「水戸黄門は旅行する」。この文はどちらも正しいが、日本人は「水戸黄門は旅行する」とは言わない。これが語感であり、英語でこのレベルまで到達するのは簡単ではない。
「語感」という言葉に触れ、その簡潔で明瞭な説明に感心した。
●文法と会話
30年ぶりに連絡を取ったことをきっかけに、2024年の5月からかつうら英語塾の通信講座を受講している。受講を始めたばかりだが学ぶところが多い。
講義の中で「大切なのは文法に基づく英文解釈の能力を身に着けること。英会話能力は、単なるプラクティスの問題である」という話を聞いた。簡単すぎて拍子抜けするぐらいだが、明確な説明はストンと腑に落ちた。これで、英語学習における迷いが無くなった。
巷に出回っている英語に関する書籍では、「英文法か」「英会話か」と、どちらかを取り上げたものが多く、私のように「漠然と英語がうまくなりたい」と思っている者には、釈然としなかった。
文法の重要性は共通しているが、「英文解釈」と「英会話」はそもそも別物であり、「英語」として、一括りにとらえることがナンセンスなのだ。英文解釈に取り組みながら、「こんなことをしても、しゃべれるようにはならないのに」、と悶々とすることがなくなった。
●受講効果
受講し始めて数か月にも関わらず、読解力が確実に向上している。現在、取り組んでいる英検1級の勉強にも大いに役立っている。社会人になってからは、ネットニュースに目を通したり、小説を原書で読んだりする程度だった。英文の大まかな意味さえ分かれば問題はなかったが、意味の取りづらい部分が出てくるとストレスを感じていた。いかに曖昧に英文を読んでいたかを思い知らされ、文法に基づく分析の効果と重要性を実感している。
実際の授業では、生徒さんが答えに窮した時には、その生徒さんの思考をなぞるように解説がなされる。なぜ思考が行き詰ってしまったかが丁寧に解きほぐされる。文法を使った論理的思考を身に着けることができる。
●かつうら英語塾のもう一つの魅力
講義の最初と最後に、英語とは直接関係ない話がある。ときにはかなりの時間が割かれることがある。その内容は、具体的な勉強法から、人生観まで多岐にわたる。社会人でも参考になることが多い。知的好奇心が刺激され、こちらの方も楽しみにしている。
不思議なことに、かつうら英語塾は、大学受験の英語塾であるにもかかわらず、有名大学に合格することや、エリートとして人生を歩むようなことは勧めてはいない。だだ、結果的にそうなっている卒業生は多い。単なる学問以上のものが学べる場であり、適塾や松下村塾といった幕末の私塾のように感じている。
●やがて順番が逆転する
かつうら英語塾で学べるものは、①英文解釈能力、②論理的思考、③ものの見方・人生観の3つである。高校生にとっての優先順位は①②③の順であり、③などはよく分からないと思う。
社会人として仕事をしていくうえで最も重要なのは②である。やがて歳を重ね、仕事に対する疑問や不満、健康、結婚、出産、子育て、親の介護などに直面し、③が一番に繰り上がる。最終的には、③②①の順に落ち着く。授業で、しばしば幸福についての話になるのも、こうしたことが前提にあるからだと思う。
●英語との関わり
音声データを再生していると、生徒さんの声に交じって蛙の鳴き声が聞こえてくる。臨場感もあって、講義を聞いている自分も高校生に戻った感覚になる。
初夏になると蛍が飛ぶような田舎で育った私にとって、中学で習う英語は、自分が世界に羽ばたけるような期待を抱かせてくれた。他の科目にはない魅力的な科目だった。
しかし、高校生になると、頻繁で膨大な量のテストに追われ、英語を学ぶ喜びは薄れ、テストの結果に一喜一憂した。
地元の大学の英文科に進み、サークル活動でESSに入った。しかし、日本人どうしで英語で話す違和感から、すぐに退部しダラダラと大学生活を送った。
社会人になってからは、NHKの講座を聞くなどして断続的に独学を続けていた。英検の準1級に合格したことが、たまたま上司の目に留まり、オーストラリアで2年間勤務するという幸運に恵まれた。
図らずも中学生の頃に抱いていた希望が実現した。初めての海外生活は楽しい反面、仕事でも日常生活でも、英語には悩まされ続けた。しかし、英語圏で暮らすという貴重な経験で得たものは多かった。
振り返れば、英語はつかず離れず、身近にあった。まもなく 60 歳を迎えるが、この年になって、40数年ぶりに、英語学習の楽しさを取り戻している。これからは人生を豊かにしてくれる存在として英語と関わっていきたいと考えている。
2024年9月5日