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英語力も国語力もない英語教師

by 勝浦 郡章

●おかしな日本語がまかり通る

「初めての空気呼吸は子宮内でまねていた水中の海洋生物から、たった今仲間入りした空気呼吸するほ乳類への瞬間的な変容を示し、私たちを永久に定義する」

これは、ある高校の校内模試の解答である。この奇妙な解答を基準に高校生の何を採点しようというのだろうか。

以下が問題の英文である。

Our first breath of air marks an instant transformation that redefines us forever, from the underwater marine creatures we’ve been mimicking in the womb to air-breathing mammals we’ve now joined.

英文解釈に関する説明は省くが、私の訳文はこうなる。

「最初の呼吸によって、子宮のなかで真似ていた水中の生物から、現在の呼吸する哺乳動物へと、われわれは変わるのである」

夏目漱石は、弟子が“I love you.”を「われ汝を愛す」と訳したのを叱責し、「月がきれいだ」と訳したという。

漱石は、文豪としての経歴よりも、英文学の研究者であり英語教師であった期間の方が長い。漱石の文学は、英語力の基盤がなければ、成立しなかっただろうとさえ言われている。

漱石のような英語と日本語に通じた師がいれば幸いだが、この高校にそんな人物は望むべくもない。奇妙な解答がまかり通る現状をたしなめる教師もいなければ、それを恥じる教師もいない。

●英標の読み方

この高校では、「英標」を次のように推奨している。

―「英文標準問題精講」には、大学入試に出てくるすべての文構造が入っています。個別試験の準備にうってつけの教材です。また、どの文章も英米の偉大な文豪、評論家、哲学者、科学者などによる名文ばかりです。どの問題に取り組んでも、必ず皆さんの視野を広げ、新しいものの見方を与えてくれるでしょう。

学習の仕方ですが、まずは文章の流れをたどって大まかに意味をつかみます。次にすべての文構造を正確につかんでください。その際に比喩的表現が具体的に何を表しているのか、句や節の特殊な配列が何を目的としているのか、なども考えるようにしてください。特殊な表現にはすべて理由があります。文章の意味がすべて理解できたら最後に数回音読してください。

各自の計画に基づいて、何度も繰り返し、継続的に学習を進めてください。分からないところがあればいつでも英語職員室へ質問に来てください。―

●「英標の読み方」への批判

同書の「音読」と「精読」を数百回くり返してきた身には、感想は異なる。

「どの文章も名文ばかりである」とは一度も思ったことはない。「どの文章も視野を広げてくれる」といった印象も持ったことはない。著者の原仙作氏が、なぜこんな文章を掲載したのか理解に苦しむものもある。

「特殊な配列や表現」が、「倒置」や「省略」を指すのであるなら、それは文法ルールに基づく一般的な表現形式であって特殊性ではない。

「大学入試の文構造がすべて収まっている」と主張するが、まやかしである。入試に出る文構造など挙げれば切りがなく、1冊の本に収まるはずがない。

同書がすべての文構造を網羅しているのであれば、英語習得のバイブルになる。そうであるなら、生徒に丸投げなどせず、手取り足取り丁寧に指導してはどうか。実際、99%の高校生は同書を読むことに苦労している。「質問に来い」などと尊大な態度をとるのではなく、進んで救いの手を差し伸べるのが教育者の役割である。

「まずは文章の意味を大まかにつかむ」と言うが、私は日本語の本を読む際に、大まかな意味を把握してから読み直したりはしない。英文であっても同様である。知らない単語があればすぐに辞書を引く。

推測や想像による思い込みは、勝手な解釈や誤った結論を導く。いちど思い込んでしまうと修正するのに苦労する。areをarea(領域)に読み間違えると、動詞がなくなり混乱をきたす。大まかな読み方は精読の対極に位置する。正しい読書法は、「思い込み」や「決めつけ」を慎むことである。

私自身、同書を数十年かけてくり返し読んできた。「英標」とはどういう本で、どう読んだらいいかを、『英標の構造分析』に書いた。そこでは、「すべての…」「どの文章も…」「名文ばかり…」「必ず…してくれる」といった、学習者に幻想を抱かせるような言葉は使っていない。

●英語教師の国語力が低い

ひとむかし前までは、英語の科目と言えば、「リーディング」「文法」「英作文」の3つだった。それぞれ何を学ぶかの説明などいらなかった。しかし、今は事情が異なる。

ある県立高校は、「コミュニケーション英語」という新しい科目を次のように定義している。

「外国語によるコミュニケーションにおける見方・考え方を働かせて、外国語による聞くこと、読むこと、話すこと、書くことの言語活動及びこれらを結び付けた統合的な言語活動を通して情報や考え方などを的確に理解したり適切に表現したり伝え合ったりするコミュニケーションを図る資質・能力を育成することを目指す」

ひどい悪文である。「コミュニケーション……」を掲げながら何も伝えてない。出来の悪いパロディーである。学科の定義がグジャグジャであるということは、これを書いた教師の頭の中もグジャグジャである。それに基づいて行われる授業もグジャグジャであることは容易に想像できる。

この高校にも、それを指摘する教師もいなければ、恥ずかしいと思う教師もいない。

●英語教師の生産性が低い

文科省は英語力に関して調査結果を発表した。『中高英語力に地域差』(読売新聞2023年5月18日)。英語教育は「地域差」が問題だという。

記事を読み、もういちど見出しに戻ると、あきらかに世論をミスリードする意図が透けて見える。問題の本質は「地域差」などではない。「英語力そのものの低さ」である。このことを『高3生の7割は高1以下の英語力』のなかで指摘した。

高校生の7割が高1以下の実力にとどまる状況を考えると、教えている英語教師の質こそ問題視すべきである。3年という年月をかけて、どのように教えたら、このような結果になるのかを検証し、その生産性の低さを批判すべきである。

受験を目指す高校生は競争社会の最前線にいる。1点でも足りなければ入試では不合格である。対照的に、生徒を教える教師は競争原理の働かないぬるま湯の中にいる。どんなにひどい授業であっても、減給されることもなければ、降格されることもない。20代でとった教員免許が定年までの40年を保証する。

真摯に目標に挑む受験生と、お花畑で脳天気に過ごす教師とでは、矛盾のギャップは広がるばかりである。

2023年7月20日

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