現代の適塾
I・K 東京外国語大学卒・元神奈川県公立高校英語教師
――スマホをオンにする。塾生たちの瑞々しい声が流れてくる。『チュンプルズ』と『英標』を開き、辞書を手に取る。さあ、かつうら塾の幕が上がる。これから2時間、先生と塾生たちの熱気が教室を満たしていく――
現在、横浜の私立高校で非常勤講師として英語を教えています。かつうら先生とは東京外国語大学の同窓です。通信生でお世話になり1年になります。
『英標』の難解な英文を緻密に解き明かし、生徒が腑に落ちるまで導く——。選択肢からどうやって解答を見極めるか、生徒に対する問いかけの妙、軽快な語り口、綿密に計算された授業運び、生徒からの質問に即興で応じる技能に至るまで、同じ教師として、学ぶことの尽きない時間です。
かつうら先生は並外れた勉強家です。これまでの膨大な読書、暗記、文筆活動に加え、1日も欠かさず8年も続けているオンライン英会話。最近、ディクテーションを始めたことを授業で知りました。今もなお、自らを磨き続けています。その驚異的な継続力と忍耐力は、同じ大学で同じ外国語を学び、そして同じ英語教師でありながら、私は到底及びません。
通信講座の受講にあたり、送られてきた『チュンプルズ』を初めて手にした瞬間、圧倒的なエネルギーと時間が注ぎ込まれた大作であることがすぐに伝わってきました。個人の力で、ここまでの参考書を作り上げられるものかと、ただただ感嘆するばかりです。
70の手習いで、ヴァイオリンを始めました。長年の憧れでしたが、まさか本当に弓を手にする日が来るとは思っていませんでした。最初は指が思うように動かず、音もかすれ、楽譜を追うだけで精一杯でした。それでも前に進みたい一心で、毎日弓を握り続けています。アマチュア・オーケストラに参加しています。周囲の音の厚みに圧倒され、何度も心が折れそうになります。けれども、弾き続けるうちに、少しずつ音が変わってきます。先日の定期演奏会では、ベートーヴェンの「運命」に挑戦し、よちよちとした演奏ながらも最後まで弾き切りました。胸の奥に広がった静かな達成感は、歳を重ねても挑戦し続ける喜びを教えてくれます。
語学の学びも同じです。いくら素晴らしい授業を受けても、それを生かすには自分自身に相応の覚悟と努力が求められます。特に、徹底した復習を伴わない学びは、受けなかったのと同じだと肝に銘じて、私は受講しています。――この授業を、聞きっぱなし、受けっぱなしでは、もったいない。
かつうら塾は、単なる英語塾ではありません。先生の余談と呼ぶにはあまりに幅広く、深みのある話の数々は、学ぶ喜びとその大切さを教えてくれます。そして、どのように生きるかの道しるべにもなります。こうした学びは、かつうら塾ならではの魅力だと思います。
私にとって、かつうら塾は江戸末期の「適塾」を思わせます。「適塾」は、緒方洪庵が大阪に開いた蘭学の私塾です。志ある者たちが集い、濃密であり厳しくもありながら、温かい学びに包まれていました。かつうら塾も同じく、知と志の交差する場です。ここから、これからも多くの逸材が羽ばたいていくことを、私は確信しています。
2025年10月9日
先日、I・K君と久しぶりに電話を交わしました。学生時代に受講した、パターンプラクティスの権威である東外大の山家保(やんべたもつ)教授の名前も話題に上り、懐かしい記憶が蘇りました。I・K君は、英語談義に心ゆくまで花を咲かせられる、数少ない友人の一人です。――かつうら
