チュンプルズとともに

 

T・N 東京外国語大学・チェコ語(2019年・高松一高卒)

体験記で求められているのは、具体的な勉強方法だろうと思います。そこで、かつうらで私がどのような学習をしたかを主に紹介しようと思います。

●1年生

入塾したのは1年の秋。『チュンプルズ』『英標』「過去問のプリント」などを使った授業の流れを知りました。

しかし、そのすべての教材に関して予習と復習を行うのはかなり難しかったです。そこで、『英標』の構造分析だけでも死ぬ気でやろうと思いました。授業で恥をかきたくなかったからです。

予習は授業の4日前までにはやり終えるようにしました。『英標』の中にある2題の文章の構造分析をするだけで2~3時間を要しました。ただし構造分析は日本語を見ながら行いました。そうすることで日本語の語順を手がかりに、英文の構造が見えることがあったからです。

日本語を見ながら英文解釈をするのは、解答を見ているのと同じではないかと言われるかもしれません。しかし、何が何でも英文の構造を解き明かさねばならないという必死の気持ちでした。

余談ですが、テキストに向かって考えている時よりも、学校生活のふとしたときに、難解な英文の構造が浮かんできて、「あっ、そういうことか」とひらめくこともありました。

●2年生

2年になり、構造分析はかなり素早く正確にできるようになっていました。しかし、そこで重大なことに気づきます。チュンプルズに掲載されている単語や熟語をほとんど覚えていなかったのです。1年の時は、わからない単語を辞書で調べ、構造分析を行うだけで充分だと思っていました。

チュンプルズは、前半部は「文法解説」、後半部は「語彙・熟語のリスト」という構成になっています。私は、前半部だけを使い構造分析をし、後半部にはあまり目を通してきませんでした。自分の語彙不足に気づいたのは2年の冬でした。

チュンプルズに載っている単語を、チュンプルズのページ順に覚えようとしましたが、上手くいかず。そうこうしているうちに2年が終りました。

●3年生

さすがにこれではまずいと思い、別の覚え方を模索しました。

すでに終えた『英標』の文章を復習しているとき、関連する単語の参照ページのメモに気づきました。それは後で参照するようにと、かつうら先生が言及した単語関連の参照ページでした。

そこで、過去にやった『英標』の文章を引っ張り出し、単語の参照ページを「見ていく」ことにしました。「見ていく」というのは、2年生のときに、正面から覚えようとして、上手くいかなかったからです。

チュンプルズを常に持ち歩き、授業で参照したページを電車の中で眺めたり、学校の授業中に内職で眺めたりしました。何10回と見たページは写真のように画像として脳内に焼き付きます。また、眺めながらブツブツと声に出すようにしました。「単語」「熟語」「フレーズ」の対義語や同義語にも注意を払いました。

以後の『英標』の予習では、ほとんどすべての単語をチュンプルズでチェックし、ノートの余白に対義語と同義語をメモしました。それらは授業中にかつうら先生から矢継ぎ早に問われるものばかりでした。また、それらの単語を使って短文を作り、それを繰り返すと、空で単語やフレーズの体系が描けるようになっていました。

●志望校の過去問

3年の6月になって、志望校の過去問に取りかかりました。しかし、ほとんど歯が立ちませんでした。東京外大の長文問題は2~3ページ分もあります。英文の下線部を指定字数で説明する形式ですが、結果的には段落の要約でした。

これは、塾でやる英作文に似ていると思いました。3年になるとかつうらでは英作文が加わります。読みにくい日本語を、いかに英語に訳すかというものです。英作文だから「英語力」がカギかと思いきや、実は、「日本語力」「論理力」「要約力」が問われていました。

英文の要約は「英語力」+「国語力」であり、英作文で求められる能力と同じです。「英作文の能力」と「日本語の要約力」は重なり合っています。

●リスニング対策

東京外大の最終問題はリスニングです。リスニングは、英語で音声を聴きそれを英語で要約するという完全な英語モードです。リスニング対策では、かつうら先生の勧めで、『レアジョブ英会話』を利用しました。スカイプを使ってフィリピン人講師と1対1でほぼ毎日会話を交わしました。ただ、オンライン英会話は3年の9月になって始めました。

最初は苦戦しました。1対1でしゃべるという逃げ場のない状況は、そうとうハードルが高かったです。しかし、ほぼ毎日受講することでプレッシャーは減っていきました。

このレッスンの予習では、テキストのニュース記事の音読とシャドーイングを行いました。講師の質問には、ブロークンではなく、フルセンテンスで答えることを目指しました。記事の要約を求められることもあり、要約文は頭の中で準備しておきました。オンライン英会話で、「リスニング力」「要約力」「作文力」「会話力」が身につき、入試本番は、上がることなく確かな自信を持って臨むことができました。

●反省

以上が私の3年間の学習ですが、振り返ると後悔があります。

①なぜ語彙力の向上と構造分析を同時に取り組まなかったのか。
②なぜ『英標』の要約をやらなかったのか。
③なぜ『英標』の音読をもっとやらなかったのか。
④なぜ『英標』や「プリント」の復習を徹底してやらなかったのか。
⑤なぜ『オンライン英会話』をもっと早くからやらなかったのか。

塾生には、自分の頭で考え自分なりの学習方法を見つけて欲しいです。

●大学生活

現在、東京外大の国際交流会館という寮に住んでいます。寮生のうち半数は外国人。彼らと話をするたびに新しい価値観に触れています。受験時代と違って、たくさんの自由時間があり、圧倒的に読書量が増えました。

大学の授業は高校の授業よりいいものだろうと想像していたがそうでもありません。自分の興味がない授業はつまらないです。本を読んでいる方がましだと思えて、実際にそうしている授業もあります。

専攻語のチェコ語に関して、かつうら先生からこんなことを言われました。「英語は教師だけでも全国で何万人もいる。トップになるのは難しい。チェコ語が学べる機関は東京外大だけ。チェコ語学科の定員は15人だから、過去50年間でチェコ語を学んだ人は750人。チェコ語を仕事で使う人はその半分ぐらいだから350人。その中で第一人者になるのは、高校で学年トップになるのとさして変わらない。トップを目指せ」

その通りだと思います。チェコ語を学ぶ人は少ないです。英語の世界でトップになるのは不可能でも、マイナーな専攻語の世界なら不可能ではありません。圧倒的な1位になり、誰も自分を超えられないとすれば、かなり気分がいいものだと想像できます。

大学生になった今でも手元に置いているものがあります。『チュンプルズ』と「配付資料集のバインダー」です。これらは、かつうらで学んだものの集大成です。

2020年6月20日