自己紹介はあらゆるアウトプットの核になる

オンライン英会話のすすめ(3)

●どんな会話も自己紹介から始まる

『レアジョブ』には4,000人の先生が登録されてる。その中でお気に入りの先生を100人までブックマークできる。さらにその中で、自分の都合と、レッスン時間が合致する相性のいい先生となると10人くらいに絞られる。

初めての先生とのレッスンは、自己紹介から始まる。今まで300回を超えるレッスンを受け、これまで受講した先生の数は3、40人に上る。ということは、実践した自己紹介の数も、先生の数と同じ3、40回ということになる。

自己紹介は回数をこなした分だけ確実に上手くなる。普通、オンラインレッスンでの自己紹介は30秒くらいで終わるが、場合によっては、5分になったり、10分になったりする。自己紹介に時間の制約はない。私の場合、およそ30秒で、こんな自己紹介をしている。

“I’m a self-employed English teacher. I teach English at my home. The class starts at 8 in the evening and goes on for two hours. My students are senior high school students, aged 15 to 18. I give a group lesson, not a one on one lesson. They are preparing for an entrance examination to the university. I usually use written materials and have no chance to speak English. That’s why I joined this RareJob course to improve my speaking abilities.”

こう紹介すると、相手も先生なので、興味津々でいろいろ質問してくることがある。「どういう授業形態なのか」「人数は」「いつどこで教えるのか」「どういう教材を使うのか」「どうやって生徒を集めるのか」「それまで教えた経験は」「塾の前は何をやっていたのか」「教えることの問題点は」等々。こうなると25分のレッスン全体が自己紹介をきっかけにフリートークで展開する。

「名前」と「年齢」だけの自己紹介もあるが、それではぶっきらぼう過ぎる。これから、目の前の先生との会話が始まる。自分のことを少しでも知ってもらいたいという気持ちで紹介するといい。そう考えれば、自己紹介は単なる形式としての挨拶ではなくなる。

●会話はキャッチボール

オンライン英会話では、PCの画面を隔てて、相手と自分が向き合っている。向き合い、言葉を投げ合う以外は何もない。そこには言葉のやり取りのルールのようなものがあることが、身体で分かってくる。

コミュニケーションはよく「キャッチボール」にたとえられる。相手からの質問に答え、今度は相手に質問する。回数を重ねると、こう投げたら、こう返ってくると予想できるようになる。慣れれば、相手がキャッチしやすいように投げ返してあげようという配慮も生まれる。

英会話は、スポーツと同じで、Practice makes perfect. (習うより慣れろ)の世界。本をいくら読んでもキャッチボールは上手くはならない。

●何か聞かれたら、「答」+αを心がけよう

一般に、聞かれたことだけに答えれば、それで責任を果たしたと考える人が多い。しかし、英会話はそうではない。

“Do you like bananas?”と聞かれて、”Yes, I do.”と答えたとする。これで質問に対して答え終わったと思い、安心していると、”Why do you like bananas?”と聞いてくる。これは、例外なくオーム返しに必ず聞いてくる。

“Yes”と答えても、”No”と答えても、必ず”Why?”と聞かれるのだから、最初から次のように、「答+理由+α」をセットにして答えるようにしておくといい。

“Yes, I like bananas. A banana is cheap and you don’t have to peel it with a knife because it peels itself. You can say it’s the lazy man’s fruit.”

「はい、好きです。バナナは安いし、バナナの皮はひとりでにむけるのでナイフを使わなくてもいい。バナナは怠け者の果物と言える」

最後の、”It’s the lazy man’s fruit.”で、おそらく相手はニッコリとほほ笑み、こんな返事が返ってくる。”Yes, it’s the lazy man’s fruit. I agree with you on that point.”

それを受けて、こう続けることもできる。”Bananas are abundant in tropical countries and people in tropical countries usually work less than Japanese people.”

ここから、「日本人は仕事をどうとらえているか」という日本人の労働観へと話題を移していくこともできる。「バナナが好きか嫌いか」という具体的な話題から、「日本人の労働観」という抽象度の高い話題へと、その気になれば発展していける。

“Have you ever been to Hokkaido?”と聞かれたら、”Yes.”だけで終わらないで、”Yes, I have been there twice. Hokkaido is famous for its seafood. You may find many seafood restaurants in Sapporo. You can enjoy fresh seafood there.”のように、答えの他に2つ、3つのセンテンスを付けたすように心がけておくと、会話が膨らんでいく。

ここでも、seafoodから、水産資源→海洋汚染→水産資源の枯渇、と文明論にまで話題を発展させていくこともできる。

●日常会話くらい……は言葉のあや

こんな芸当は自分にはムリと尻込みしても始まらない。場数を踏んで経験を積んでいくしかない。

「日常会話くらいできるようになりたい」は、言葉のあやに過ぎない。専門的な会話も難しいが、日常会話も同様に難しい。言語学者のエドワード・サピア(Edward Sapir)はこう言う。

“To talk is to communicate ideas according to the traditional system of a particular society.” 「話すということは、特定の社会の伝統的体系に従って考えを伝えること」

伝統的体系とは、文法であり、語彙であり、社会であり、文化を指すから、当然、難しい。

●30秒だけ、がんばってみよう

会話に不慣れな人は、自己紹介から練習をするといい。自分のことは、自分が一番よく分かっているから、他の何よりも一番しゃべりやすいはず。いろいろ突っ込まれても、自分のことだからなんとかなる。なんとかならない場合は、自分で分かっていたと思い込んでいただけ。実際には分かっていなかったわけだから、大きな気づきになる。

まずは、30秒の自己紹介から始めよう。英会話の自己紹介だから、今までこんな英語の勉強をしてきたとか、こんなふうに英語ができるようになりたいという将来の目標が含まれているといい。

原稿を書いて、2、3度練習したら本番に臨もう。1人でいくらリハーサルを積んでも限界がある。本番はまるで違う。

画面上の先生の顔をちゃんと見ているか、早口になってないか、声はちゃんと出ているか、丸暗記したセンテンスを棒読みでしゃべってないか、身体に力が入ってないか、変な姿勢になってないか。

こんなことは実践を積まない限り身につかない。そのためのオンライン・レッスン。どんどんミスを犯そう。ミスは、たくさん犯すことで修正される。

30秒が上手くいくようになったら、もう10秒長くしゃべってみよう。そこから
1分バージョン、3分バージョン、5分バージョンと膨らませていくと、自己紹介に厚みができる。先の私の自己紹介文だと、30秒で約80語。1分なら160語、3分なら480語、5分なら800語になる。800語は、センター試験の長文問題に匹敵するから、かなりの情報量になる。

『レアジョブ』ではオンラインの先生は4,000人。毎回先生を替えていけば、自己紹介に特化した練習ができる。特化した反復練習で、「アー」とか「ウー」とか余計なfillerを入れずに、よどみなくしゃべることができるようになる。

自分のことについてきちんとしゃべることができるということは、あらゆるアウトプットの核になる。自己紹介を繰り返せば、英会話習得の突破口になる。

2018年9月26日