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筆写すると冠詞がわかるようになる ― 音読のすすめ(9)

●筆写を始める

 中3のテキストの音読回数が1,000回を超えたあたりから、本文を書き写している。10回の音読につき、1回の筆写をしている。

 音読だけなら寝転んでも続けられるが、筆写となるとそうはいかない。きちんと座り直して手を動かさなければならない。筆写がいいといわかっていても、なかなか実行できなかった。

 ようやく筆写を始めるようになったのは、『日本語練習帳』『真似から始める文章教室・縮約練習法』を読んでからだ。両書とも、名文を書き写しそれを縮約するという文章修行法を提唱している。同書にそれぞれ課題として挙がっているエッセイや社説を書き写し、それを縮約しているうちに、筆写という手作業の心地よさを実感するようになった。ゆっくり書き写すことで、味わい方が深くなる。(『究極のスロー・リーディング』

 音読は、「目」「口」「耳」の3つの身体器官を使うが、筆写ではそれに「手」が加わる。身体で覚えるという意味では、3つよりも4つの器官を使った方が明らかに効果がある。

●暗記はしない

 中3のテキストの筆写は、自分で訳した「日本語訳」を見て、頭の中で英作した英文を書いている。それは、どれだけ正確に本文を復元できるかを確認するためではない。中3の英文をただ書き写すだけではあまりに単調なので、変化をもたせるために行っている。

 音読のときもそうだが、できるだけ暗記はしないようにしている。意図的に暗記したのでは、実際の英会話では使い物にならない。目の前にいる相手との会話は、瞬発力であり、条件反射である。「頭」ではなく「身体」で覚えたものでなければ、実際の場面では使えない。

●音読だけでは見えないものがある

 次の文で、引用符やカンマの付け方が正しいのはどれか。

 ①Many girls "dropped out" of their rich families.
 ②Many girls "dropped" out of their rich families. (Program 9-4)

 ③Well, those are the three Rs: reduce, recycle, and reuse.
 ④Well, those are the three Rs: reduce, recycle and reuse.(Program 3-1)
 
 ⑤"It's all right, officer ," the man said.
 ⑥"It's all right, officer", the man said. (Program 10-1)

 ⑦"Very interesting!" said the policeman.
 ⑧"Very interesting!", said the policeman. (Program 10-1)

 ⑨"Oh, I grew a bit after I was twenty," said the tall man.
 ⑩"Oh, I grew a bit after I was twenty." said the tall man. (Program 10-2)

 音読では、引用符やカンマは見えない。実際に書いてみると、その打ち方は意外とむずかしい。正しいのは①、③、⑤、⑦、⑨。

●筆写すると冠詞に注意が向く

 So we can say wind power is a clean energy sourse. (Program 8-1)

 音読すると、"is a" の部分は、sとaがリエゾンして(溶け合って)、「ザ」の音になる。音読では問題にならないが、いざ筆写しようとすると、"is a" なのか"is the"なのか、区別がつかないことに気づく。音読では意識にのぼらなかった箇所が浮き彫りになる。

 日本語に冠詞はないから、ふだんは意識しないが、「なぜ、aなのか?」「なぜ、theなのか?」あるいは「なぜ無冠詞なのか?」「なぜ複数形なのか?」と考えるようになる。その結果、日本人が不得意とする冠詞の使い方について、ネイティブに一歩近づけるようになる。

  a clean energy sourse   さまざなクリーンエネルギー源の1つ
  the clean energy sourse  世の中でただ1つのクリーンエネルギー源

  a source of the engine trouble   エンジントラブルの多くの原因のうちの1つ
  the source of the engine trouble  エンジントラブルの唯一の特定された原因

 He was suffering from a bad stomachache. (Program 9-3)

 腹痛(stomachache)に形などないから、通常は不可算名詞と考えられるが、次のようにaやtheが付いたり複数形になると、具体的な数えられる形としての「腹痛」を指す。

 have a stomachache  胃が痛い(一時的に)
 have the stomachache 胃が痛い(慢性的に)

 a severe stomachache  ひどい腹痛
 intermittent stomachaches 断続的な腹痛

 本文のa bad stomachacheも、目に見えない抽象的な「腹痛」を指すのではなく、始まりと終わりがある境界線をもった「腹痛」を指す。

 本文では、a bad stomachacheの後に次のような問いが続く。「最後に物を食べたのはいつ?」「あの朝は?」「夕べは?」「きのうは?」と、形をもったa bad stomachacheの始まりを、具体的に問うている。

 こうした名詞のもつ抽象性と具象性の関係が見えるようになると、なぜ、inventionは「発明」と訳し、an inventionや、inventionsは「発明品」と訳すのかがわかるようになる。

●7万人のなかの500人

 『英語の話し方』(1970年刊 國弘正雄著 サイマル出版・絶版)のなかで著者はこういっている。

 「中学のリーダーを馬鹿にするには当たらないのです。日本には英語を専門にしている先生が大学を含めて、たしか7万人ぐらいいるといわれていますが、日本広しといえども、英語の専門家のなかで中学3年までのリーダーに出てくる英語が迅速に、ある程度の正確さで口をついて出てくる、あるいは、筆から流れ出る人は、せいぜい500人いるかいないかであろう、というのが私の率直な感想です。したがって、中学3年までのリーダーを決して馬鹿にしてはいけません。そこには、すべて英語の基本は網羅しつくされているのですから」

 7万人中500人ということは、中学英語を正確に書いたり話したりできる英語教員は、大学教授も含めて全国で0.7%しかいないということになる。同書の出版からほぼ半世紀になるが、この0.7%という数字は悪化こそすれ、改善されているようには思えない。

2015年05月12日

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