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「縮約」の延長線上に「要約」がある          

●「縮約」は「要約」とは違う

 これまでホームページ上に載せていた『英標』の「要約文」をすべて削除した。

 「要約文」は前年に作成したものだが、読み返してみるとかなり粗っぽい書き方をしていることに気づいた。何のルールも設けずに自己流に要約していった結果、原文のもつ雰囲気や格調やリズム感のようなものはすべて失われ、ただ内容をコンパクトにまとめただけの文章になっていた。

 『英標』については、これまで20数年かけて数百回の音読と数十回の精読をくり返してきたので、その文章は熟知している。ピント外れの要約文になるはずがないと自負していた。そんな慢心から好き勝手に書いた要約文になってしまっていた。自分の言葉で書こうとするあまり、著者の思考の流れをさえぎったり曲げたり時には逆行させたりしていた。

 大野晋氏は『日本語練習帳』のなかで「要約」についてこう書いている。

 「縮約の次の練習です。それは400字の文をさらに縮めること。そうなるともはや原文の縮約では文章として整わなくなることが多く、要約としなければなりません。要約とは場合によって、文章そのものを読み手が作り変えなければならないものです。縮約と要約とは違う。……1字詰めるためには『しかし』を『だが』に変えるとか、『なければならない』を『べきだ』に変えるとかという工夫が必要になってくる」

 つまり大野氏のいう要約とは、削って削ってこれ以上は削れない状態にまで縮約してはじめて文章そのものを加工するということである。

●『英標』の縮約をやってみて

 『日本語練習帳』には、社説の30パーセント縮約の例が載っている。それにならって、『英標』の全220題を、それぞれ約3分の1に縮約してみることにした。ぴったり33パーセントに縮約するのは実際的ではないので、およそ3分の1の縮尺率をメドに、30パーセントから38パーセントの幅をもたせた。

 『英標を縮約するとばつぐんに力がつく』のなかで、「縮約はそぎ落とすだけなので、要約するよりも作業は楽である」と書いたが、実際は違っていた。字数の制限もあって、縮約のほうがはるかに難しい。ここはこう表現したほうがわかりやすいと思っても、原文の形を崩すことはできない。要約するのではなく、縮約なのである。できるのは「縮める」ことと「削る」ことだけであって、原文に手を加えることではない。

●訳文縮約

 『英標』の「訳文縮約」で、いちばん頻繁に削った箇所は、「ノデアル」だ。「ノデアル」を削っても、文意に変化は起こらない。「問題はなかったノデアル」は「問題はなかった」に、「かまわなかったノデアル」は、「かまわなかった」とした。『英標』は評論文が多いため、「ノデアル」が多用されていて、「ノデアル」は真っ先に削っていった。

 『日本語練習帳』のなかで「ノデアル」について大野氏はこう言っている。

 「ノデアルが繰り返し使われている。強めというよりは、著者が力んでいる、押しつけていると読む人もあるでしょう。私はある時期、『ノデアルを消せ』と自分に言い聞かせて、書き上げた原稿のノデアルをすべて消したことがあります。かえって文章がすっきりして強くなる」

 縮約で字数を減らしていこうとすると、「ノデアル」は、必然的に消していかざるをえなくなる。「ノデアルを消せ」とわざわざ言い聞かせなくても、「ノデアル」は使わないようになっていく。このことからも縮約の練習が優れた文章トレーニングであることが分かる。『英標』にもこんな文章が載っている。

 「英語を書くことは学問ではなく技術である。確実な規則というものはない。最も簡潔な表現法がいつでもいちばんよいといった原則があるだけである」(『英標』練習問題【21】縮約文)

●英文縮約

 『英標』の「英文縮約」では、まず次のような省略形を用いて語数を減らしていった。

 do not→don't / He is →He's / He would →He'd / He has come→He's come 

 また、一部を削っても同じ表現形式の変形だと見なすことができるものは、短い方に置き換えていった。

 for the sake of →for / in order to do →to do / so that→that

 また、andなどの等位接続詞がもつ連結機能から、同じ単語を2度くり返さなくても1語で代用できるときは1語とした。

 No animal and no savage → No animal and savage

 さらに、目的格の関係詞(whom, which, that)や接続詞のthatも削っていった。ただ、thatには、同格のthat、主格関係詞のthat、強調構文のthatがあり、英文法がよくわかっていないと、これらをむやみに削ってしまうとことになりかねない。それではセンテンスとしてなりたたなくなるので注意を要する。逆の言い方をすれば、縮約の練習をとおして、文法をベースにした英文構造への理解が深まるともいえる。

●縮約をとおして要約文が書けるようになる

 「素手でピラミッドの石を押し出すことは、シェークスピアの作品で、その詩人の述べていることの意味を変えたり表現をまずくしたりしないで、1つの語を取りかえたり位置を変えたりすることほど、困難ではあるまい」(『英標』練習問題【6】縮約文)

 名文は、ムダのない言葉で書かれているから縮約するには骨が折れる。とくに原文が短い場合は、絞りきった雑巾をさらに絞るように、どこをどう削ったらいいかお手上げ状態になる。もっともそれだからこそ文章修行なのだが。

 東大は、半世紀以上にわたって「要約問題」を出題し続けている。今年も、「英文の内容を80~100字の日本語に要約せよ」という問題が出ている。英文の語数は約300語である。一般に、「日本語の文字数」と「英文の単語数」の比率は3対1である。「80~100字に要約せよ」は「約10分の1に要約せよ」ということになる。早稲田大学文化構想学部では、英文を読んで英文で要約せよという問題が出ている。

 この種の要約問題は受験生が最も苦手とする出題形式であり、センター試験に代表されるマークシート方式の対極に位置する。マークシート方式で求められている能力は、瞬発力であり、スピードであり、条件反射である。答えがわからないときはエンピツをころがしても解答できる。

 要約文は、原文をゆっくりていねいに愚直なまでにくり返し読み込まなければ書けない。生きていくうえで、どちらの能力を身につけたほうがいいかは明らかである。

2014年09月01日

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