勝浦英語塾では、英語指導歴30年のエキスパートが、大学受験英語を通して、30年後にも通じる、生き方と在り方とその方向性を伝えています。 

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    ─── センター試験の廃止を (その5) ───

            同じ2点を得点しても
   

●大学生にはなれたが

 地元の国立大学に通う学生から、翻訳の依頼を受けたことがある。英語の授業についていけないので、大学のテキストを訳して欲しいという電話だった。テキストは「英国の生活文化」を紹介した高校レベルの読み物である。辞書を引いても読めないという。高校時代の定期試験では、英文が読めなくても、訳文を丸暗記していればパスできたそうだ。

 センター試験は合計点で判断するから、かりに英語が0点でも他教科の成績が良ければ理屈の上では合格できることになる。国公立大、私立大を問わず、大学で英語の授業についていけないという学生は相当数にのぼるようである。

 こんな学生もいた。東京の有名私立大学に通っている。大学で英語の単位が取れないという。以下に挙げる英文の違いを説明してもらうと、予想通りとはいえ、答えられなかった。自分はAO入試で合格したから、受験の修羅場は経験していないという。問うたのは決して難しい英文ではない。かんたんな5文型の話である。

 ①I found an easy book.
 ②I found the book easily.
 ③I found the book easy.

 基本5文型が見えないのだから、英文など読めるはずがない。大学の授業には当然ついていけない。大学には入ったものの、まともに英語の単位を取るのは絶望的だろう。

 なぜこんな大学生が生まれているのだろう?

●2点の意味は大違い

 マークシート方式の試験では記号さえ合えば正解である。そこではどんな方法で正解しようと解答のプロセスは問われない。エンピツをころがして正解しても2点。たまたま単語の意味を知っているだけでも2点。正確な文法知識をもとにていねいに読み解いてもわずか2点である。

 マークシート方式の試験では、受験生はどのような考え方で解答しているか、次の2題を対比させてみよう。(2012年・センター試験)

 (  )に入れるのにもっとも適当なものを、下の①~④のうちから選べ。(配点2点)

  問1 Some companies have (    ) a new policy of using English as the official in-house language. 

  ①absorbed   ②accompanied    ③adopted    ④appointed

  問4 We had the microwave, the toaster and the heater all (  ) at the same time, and the circuit breaker switched off. 
 

    ①in        ②on           ③up         ④with    

●たまたま単語を知っていれば得点できる

  問1 Some companies have (   )a new policy of using English as the official in-house language.

  ①absorbed   ②accompanied    ③adopted    ④appointed

 問1の英文で、of以下の前置詞句はpolicyを飾る修飾語だからof以下が読めなくても解答には差し支えない。したがって問題文は次のように簡略化して考えることができる。

  Some companies have (   )a new policy.

 ①を吸収する   ②に同伴する    ③を採用する   ④を任命する

 単語の意味さえ知っていれば、答えが③であることは明らかである。問題文は「一部の会社は社内公用語として英語を使用するという新たな方針を採用した」という意味だが、問われているのは一つの単語の意味にすぎない。

 なぜ大学受験生にこんな単語クイズを課すのだろうか。単純な記憶力の問題だから、たまたま知っていればラッキーだし知らなければアウトだ。無数にある英単語のなかからadoptを問うだけで受験生の語彙力など計れるはずはない。そもそも単語の意味など、知らなければ辞書を引けばすむことであり、大学で学ぶ知性とは何の関係もない。

 price / prize / praise やliterary / literate / literal は、スペルと発音が似ているため意味や音を取り違えやすい。しかし問1で選択肢に並んでいる単語は、たんにaで始まるという共通項だけで、意味の類似性も音の類似性もない。おそらく無定見に抽出した単語だろう。そこからは問題作りのセンスも工夫も感じられない。せめて選択肢にadoptと発音が類似するadaptが入っていれば、それなりの意図は感じられるのだが。

 以下の私大の問題は、センター試験と同じ出題形式だが、この私大の問題の方が選択肢に工夫の跡がうかがえる。

 空所を補うのに最も適切な語を選べ。(2012年・学習院大学法学部)

 Most people no longer (  ) of smoking in public places in the United States of America.

 ①acknowledge(認める) ②admire(称賛する)  ③admit(認める)  ④approve(認める)

 英文の意味は「たいていの人々は米国の公共の場での喫煙をもはや (  ) ない」で、選択肢にはaで始まり意味が類似する単語が並んでいる。ほぼ同じ意味なので意味だけでは絞りきれない。決め手は (  ) の後に続くofである。ofをとるのは④のapproveだけである。

●文法をベースにていねいに読まなければ得点できない

 問4 We had the microwave, the toaster and the heater all (  ) at the same time,
   and the circuit breaker switched off.

   ①in    ②on    ③up    ④with

 問1が単純な語彙力を問う問題なのに対し、問4は、おもむきがまったく異なる。ここで問われているのは記憶力でも語彙力でもない。問われているのは文法力であり、しっかりとした読解力である。ではどのような文法知識をベースに、どのような読み方をしなければならないのだろうか。

 まず最初のandに着目すると、「電子レンジ」「トースター」and「ヒーター」と3つの名詞がandでつながっているのがわかる。この時点で、これらの名詞はhadの目的語であり、前半部分の構造はSVO(X)らしいと推測できる。

 つぎに着目するのは二番目のandである。andの後には、the circuit breakerとswitched offが並んでいる。両者の関係は、「ブレーカーのスイッチが切られる」という受動関係である。この受動関係は、I'll have the car repaired.「クルマを修理してもう」において、the carとrepairedの関係が受動関係にあるのと同じである。

 ここでは、have+O+Cにおいて、OとCの関係は「主語」と「述語」の関係にある点を理解しておかなければならない。

  have+O+原形動詞  She had her brother help her.   弟に助けてもらった
  have+O+過去分詞  I had my photo taken.       写真をとってもらった
  have+O+副詞    I had some friends in for tea.   友だちをお茶に招いた

 問題文の前半は、We had the microwave, the toaster and the heater all (  ) at the same time.である。「私たちは電子レンジとトースターとヒーターを全部を同時に (  ) した」という意味だと考えられる。後半に「ブレーカーのスイッチが切れた」と続くから、結局、前半部分は「全部の電源を同時に入れた」の意味だとわかる。正解は②のonである。

 We had the microwave, the toaster and the heater all on at the same time, and the circuit breaker switched off. 「電子レンジとトースターとヒーターを全部を同時に使ったら、ブレーカーのスイッチが切れた」

●点数だけで判断すると錯覚する

 ここまで見てきたように、問1で2点を得点するのと、問4で2点を得点するのとでは、同じ2点でも月とスッポンほどの差がある。実際にはエンピツをころがしてたまたま正解する受験生もいるから、2点が持つ意味はさまざまである。

 こうした各問の点数を積み上げていったものが合計点である。解答に到るプロセスの方に光を当てれば、合計点が120点と160点で、160点の方が優秀だとは無条件にはいえなくなる。記号で表される答えが重要なのではない。重視すべきは、結果ではなく思考のプロセスの方である。

 授業で日常的に受験生に接していると、個々の受験生の実力はほぼ正確に把握できるが、センター試験の結果は実力どおりにはなっていない。 毎年そうとうのズレを感じている。

 センター試験が英語力の実態を反映しているとはとても思えないのだが、こうした点数はひとり歩きを始める。英・数・国・理・社の全科目を合計して、その点数をもとに志望校選びが始まる。数値化されると比べやすいから、その数字に合理性があるかのように錯覚する。

 「身長」と「体重」を合計しようなどとはだれも思わないが、「英語」と「数学」の点数なら平気で合計する。そしてその数値に無邪気に一喜一憂する。かりに「身長」+「体重」が230なら、次の三つの体型は、合計が同じ数だから同じ体型を示すことになってしまう。

 身長160センチ+体重70キロ=230……肥満でも230
 身長170センチ+体重60キロ=230……標準でも230
 身長180センチ+体重50キロ=230……やせ型でも230

●センター試験の存在理由

 「大学入試センター」は、その目的をつぎのように表明している。「大学入試センター試験は、大学入学志願者の高等学校段階における基礎的な学習の達成度を判定することを主目的として……」。しかし、高校の学習習熟度は、高校を卒業する時点で、高校側が判定する領域である。

 また「大学入試センター」はこうも言っている。「入試に必要とされる選抜機能、診断機能はどのように働いているのか、またどのようであるべきなのかを……」。

 しかし、現状は「5文型」すら理解していない大学生がいたり、授業についていけない大学生がいたりする。これらは、センター試験が「診断機能」も「選抜機能」も有していないことの証であり、マークシート方式のセンター試験が、「機能不全」に陥っていることを物語っている。

2013年01月03日

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