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   『日本人に一番合った英語学習法』 斎藤兆史(よしふみ)

●英語力の低下が止まらない

 英文が読めない高校生が増えつづけている。その数は世間一般が想像する以上にのぼる。長年にわたって同じ場所で同じ世代に接していると「定点観測」ができる。そこから高校生の英語力が確実に低下しているのを実感している。

 ゆとり教育世代が高校生になり、いざその世代を教え始めたころ、かなりの戸惑いを覚えた。それまでの高校生なら当たり前に知っているはずのことがらを彼らが知らなかったからだ。しかし知識量が少ないのは、ゆとり教育で学習量が減ったのだから当然のことである。

 驚いているのは、知識量が少ない点ではなく、思考力が劣っている点である。英文を読むには、文法をベースに整合性を持って英文と向き合わなければならない。「book = 本」は一つの知識にすぎないが、英文が読めるかどうかは語彙力より、論理的な思考力によるところが大きい。

 「三単現のS」というルールがある。中学生になればすぐに習う文法ルールだ。主語がHeやSheなどの三人称で単数なら、現在時制では動詞の語尾にsをつけるというルールだ。シンプルなようで意外と複雑だ。基本的には動詞の語尾にsをつけるだけだが、動詞の種類によっては、esをつけたり(go→goes)、yをiに変えてesをつけなければならない(study→studies)。エスの発音も「ス」(stops)であったり、「ズ」(runs)であったりするからやっかいだ。文法の習得は一筋縄ではいかない。

 「三単現のS」がわからない受験生はいないだろうが、辞書を使っても英文が読めない受験生はたくさんいる。文法が身についていないからである。こんな読解力で、なぜ進級や卒業ができるのか首をかしげたくなる受験生がおおぜいいる。英文が読めるかどうかは、ひとえに英文法がわかるかどうかにかかっている。文法を無視した外国語の習得などありえないのだが……。

 斎藤兆史教授は『日本人に一番合った英語学習法』のなかで、「文法軽視」の学習に警鐘を鳴らす。文科省の「実践的コミュニケーション能力の育成」は文法軽視の低級な「英会話ごっこ」であると厳しく批判している。

 以下はその一部を抜粋・要略したものである。英語学習者や英語教育者は、じかに本書を読むといい。盛りだくさんの内容である。

日本人に一番合った英語学習法


斎藤 兆史(さいとう よしふみ) 
東京大学教授(英学史・言語教育)

「受験英語ばかりやっているから話せるようにならない」「ネイティブから学べばしゃべれるようになれる」「アメリカで1年暮らしたら英語が通じるようになった」。こんな無邪気な英語論をよく耳にするが、数年間ネイティブから習ったくらいで自由にしゃべれるようにはならない。1年、2年英語圏に留学してもたかが知れている。英語はそれほど簡単に身につくものではない。本気で英語を習得しようと思ったら、多くの時間と労力を犠牲にして、とてつもない努力をしなければならない。

アメリカで生活するのに大した英語力は要らない。日常的な英語を操ることをもって英語力の証だと勘違いしている人が多い。英語の習得段階からすればそれは初歩の初歩である。そこから、英語で仕事ができる段階、文化的な議論ができる段階、高度な英文が読み書きできる段階と、まだまだ先がある。

文法など気にせずに、とにかくしゃべれというが、間違ってもいいからしゃべれ、は学習の基本に反する。何を学ぶにしても基礎がいる。生徒が文法無視でしゃべることで助かるのは、教師であって生徒ではない。楽をしているのは教師である。

20年以上大学で教えていて、英語ができない学生は、例外なく日本語の表現力が乏しい。カタカナ英語を多用する人に限って英語ができない。それは日本語の語彙が乏しいからにほかならない。高い英語力を身につけたければ、高い日本語力を身につけなければならない。日本語を磨くことが英語上達への近道である。

子供をバイリンガルにしようと、日・英両言語で教育した結果、失語症になった例がある。人間の脳はそれほど器用ではない。脳は放っておけば必ず安定した単一の言語状況を求める。音声コミュニケーション中心の早期教育によって、日本語も英語もまともに操れない日本人が大量生産される危険性がある。まずは日本語を習得したうえで英文法を学び、原書の多読を行うのが順序だ。

早期教育で会話を学べば英語をしゃべれるようになるというのは根拠のない幻想である。小学校の「英会話」は何の効果ももたらさない。英語教育の経験のない教師によって、子供の語感まで狂わされてしまう。その結果、日本語が乱れ学力低下が起こる危険性がある。英語は中学から始めて、中学・高校で基礎訓練をみっちりやればいい。中学・高校程度の学習で使える英語を身につけようというのが、どだい無理な話なのだ。

TOEFLやTOEICの受験者のなかで、もっとも得点が高いのは31-40歳、もっとも低いのは16-18歳。この若い受験者の弱点は文法と読解。文法と読解を徹底的に叩き込まれた31-40歳は何とか総合的な英語力を保っている。文科省のオーラル・コミュニケーションの教育指導を受けた若い世代は英語力そのものが低下している。

英語の基礎は、素読・暗唱・文法・多読である。基礎訓練なしでしゃべりたいという人は、柔軟性や敏捷性の練習なしで舞台で踊りたいという踊り子と同じだ。文法が苦手で、我流ででしゃべるクセのついた人は、いい加減な英語を使うクセを取り除かなければならない。それには、文法書を通読し、素読と暗唱で英語のリズムを身体で覚えなければならない。

日本人が理想とする英語の使い手がいるとすれば、それは英文著作で世界を感動させた新渡戸稲造、岡倉天心、南方熊楠(みなかたくまぐす)、鈴木大拙であり、また一度も海外に出ることなく、ネイティブに英語の試験をするほどの英語力を身につけた斎藤秀三郎である。

いま第一線で活躍している日本人の英語力は、諸外国に比べてけっして引けを取るものではない。みなしっかりと文法・読解を叩き込まれている。その学習法は文法と読解である。この学習法が復活すれば、日本人の英語力は確実に向上する。国際社会で生き残れる英語力、商談ができる英語力、達人レベルの英語力など、どの英語力を目指すにせよ、まずは文法と読解を中心に学習を組み立ててほしい。

2012年10月12日

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