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110425

a:2005 t:1 y:0

   英文の構造が見える人はほんのひとにぎり 

 ●なぜ訳せないのか

英語と日本語のあいだ



『英語と日本語のあいだ』の中に、
次のような英文が載っている。

下線部を塾生(高2生)に訳させてみた。

  I was almost sixty years old, and I don't know how much time I had left.
  Maybe another twenty years; maybe just a few months.    (P113)

  私は60に近かった。
  ─────────────────────────────────── 
  あと20年かも知れないし、ほんの数ヶ月かも知れない。  


 以下は、塾生の主な解答例である。

   ○ 私はどれほど多くの時間を過ごしてきたか分からない。
   ○ 私はどれくらいの時間を残してきたか知らない。
   ○ 私はどれくらいの時間離れていたのか分からない。
   ○ 私が去ってどれくらい時間がたったのか分からない。
   ○ 私が去ってしまうのにどれくらい時間があるのか分からない。

 どれも誤訳である。

 ●調べる手だてはない

 同書で著者は次のように述べている。

 英語の構文を正しく捉えるのは、けっしてやさしいことではない。大学卒業後さらに大学院への進学を志すような層でも、与えられたテキストのなかの、主語や目的語や補語を見誤る学生は少なくない。英語の構文をきちんと把握できるようになることが、読む力の面で「使える」レベルに達することだとするなら、満足しうるレベルに達するのは、残念ながらごくわずかの層でしかないのかもしれない。

 すでに言ったことではあるが、英語力は語彙力ではない。英語が読める力とは、いかに多くの単語(の意味)を知っているか、ということではない。単語の意味がわからないなら、辞書を引けばよい。一方、構文が掴めなければ、調べる手だてはない。お手上げの状態になってしまう。構文が把握できないと、(とりあえずは)知っている(と思える)単語が並んでいても、文全体の意味が浮かびあがってこない。話題となっていることがどのような方面のことなのか、おおよその見当はついても、何を言っているのかはわからない。ある程度の数の単語(の意味)を覚えることは必要だとしても、単語どうしがどのようなまとまりを持ち、どのような構造を作っているのかが見抜けなければ、英語を読んだことにはならないのである。

                          『英語と日本語のあいだ』(P120)


 著者の肩書きは、東京大学大学院総合文化研究科教授とある。したがって、ここでいう大学生は東大生だ。大学入試問題の基本は読解力である。大学生は、一応、入試の修羅場をくぐり抜けてきたわけだから、一定水準の読解力は備わっていると考えられる。

 それにもかかわらず、「読む力の面で、満足しうるレベルに達するのは、ごくわずかの層でしかない」と著者は言う。

 まったく同感である。このことは、私自身も受験生を教えていて日々痛感していることだ。単語は分かっても文の構造が見えないと、塾生の解答のように、トンチンカンな訳を書くことになる。著者も言うように、構造が見えなければ、辞書を引こうが参考書を調べようが埒(らち)があかない。英文を解釈しようにも、なすすべがないのである。

 ●5文型は最重要文法事項

 著者の言う「主語や目的語や補語を見誤る」とは、言い方を変えれば、5文型が見えないということである。5文型とは、すべての英文は、S、V、O、Cの4つ構成要素からなるとする文型分類のことだが、ここでつまずく学生は相当数にのぼる。

  1.S+V      Everybody laughed.(みんなが笑った)
  2.S+V+C     His eyes are blue.(彼の目は青い)
  3.S+V+O     Foreigners admire Mt. Fuji.(外国人は富士山を賛美する)
  4.S+V+O+O    I gave him my address.(私は彼に住所を教えた)
  5.S+V+O+C    I found the box empty.(箱は開けてみたら空だった)

 では、なぜ5文型でつまずくのだろうか。いくつか理由が考えられる。一つには、それがあまりにも単純な内容だから、つい分かったつもりになってしまうということ。また一つには、5文型を学習する時期が高校入学直後のため、バタバタしているうちにいつの間にか通り過ぎてしまうということ。さらに、「実際の英文」と「5文型の知識」の橋渡しが、授業などで上手く機能していないことなどが考えられる。先の塾生の誤訳も、5文型に由来するミスにほかならない。

 ここで冒頭に採り上げた英文をもとに、「実際の英文」と「5文型」の橋渡しをやってみよう。

 ①How much time do you need?(時間はどれくらい必要か?)
 ②How much time do you spend studying?(勉強にどのくらい時間をかけるのか?)

 ①②の文から分かるように、How much timeは名詞句であり、①ではneedの目的語、②ではspendの目的語になっている。

 同様に、問題文のI don't know how much time I had left.でも、how much timeは名詞句であり、目的語の働きをするだろうと考えられる。では、何の目的語だろうか?

 ●have + O + 過去分詞

 塾生の誤訳から逆算すると、どの誤訳も、how much timeを"had left"の目的語だと考えている節がある。しかし、そうではない。正しくは"had"の目的語である。

 正 how much time I had // left.
 誤 how much time I had left // .

 how much timeをtwenty yearsに置き換えれば、文型の違いがよりはっきりするだろう。

 正 I + had + twenty years + left.  S+V+O+C
 誤 I + had left + twenty years.    S+V+O

 したがって、I don't know how much time I had left.の訳は、
「私にはどれだけの時間が残されていたのか分からない」となる。

 5文型の理解こそ、英文解釈の根幹をなす最重要文法事項の一つである。

2011年4月25日

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