勝浦英語塾では、英語指導歴30年のエキスパートが、大学受験英語を通して、30年後にも通じる、生き方と在り方とその方向性を伝えています。 

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   英語力よりも日本語力を ――― 英作文の勘所 

 ●日本語のセンス

 英作文は、「文体」や「形式」を伝えることではない。伝えなければならないのは「内容」であり「情報」である。英作文のカギは、日本語の読解力にある。問題文を英作しやすい日本語に書き換えられるかどうかで、英作文の出来、不出来は決まる。

 英作文で問われているのは、日本語に対するセンスであり、国語力である。It's not an exaggeration to say that ...や、It is not too much to say that ...といった英作文の常套句(cliché)を暗記することではない。

 次の文は、京都府立大学2010年(前期)の英作文の問題である。

 本を読むというのは、やはりその人の趣味、たのしみ、というふうに考えたい。本を読むことで人格が向上したり、知性が顔に漂ったりする、などと考えないほうがいいだろう。

 二つの文からなる、わずか80字ほどのセンテンスだが、英作しやすいように加工してみる。

 まず最初のセンテンスでは、「というふうに考えたい」とある。

 「というふうに考えたい」は、
 「と考えたい」
 「と考える」
 「である」とどう違うのか。

 また、第二センテンスでは、「などと考えないほうがいいだろう」とある。

 「などと考えないほうがいいだろう」は、
 「と考えないほうがいい」
 「と考えない」
 「ではない」とどう違うのか。

 結論は、意味内容において、何も変わらないということだ。「文体」や「表現形式」が変わっても、伝えるべき「内容」や「情報」は何も変わらない。少なくとも欠落する「情報」は何もない。

 ●リダンダンシー(redundancy)

 冗長な文としてよく引き合いに出される文がある。

 「いにしえの昔、武士の侍が、山の中の山中で、馬から落ちて落馬して、女の婦人に笑われて、赤くなって赤面し、家に帰って帰宅して、小さな刀の小刀で、腹を切って切腹し、お墓の墓地に埋められた」

 このように情報が重複した状態を冗長性(redundancy)という。どんな言語でも50%の冗長性があるといわれている。

 英語の例を挙げれば、He is an old man.で、各単語は、それぞれ次の情報を担っている。

 He :単数の男
 is :主語は三人称の単数、時制は現在
 an :一人の
 old:年老いた
 man:単数の男

 「単数」と「男」という情報が、何度も重複しているのがわかる。He is an old man.で、重複する情報をそぎ落とぜば、Heとoldだけになり、情報としては、それで十分ということになる。海外旅行で、カタコトの英語であっても「ミー、ステーション」と言えば、必ず駅への道を教えくれる。

 ●できるだけシンプルに

 できる限り文章を簡素化すると、圧倒的に英作しやすくなる。回りくどい表現を整理し、冗長な修飾語を削ると、文章がすっきりし、内容が鮮明になる。

 先に挙げた英作の問題文をさらに整理してみる。

 「やはり」は、after allや、as is expectedが考えられるが、
  さしたる情報は含んでいないので削る。
 「人格」は、personalityか、characterか、それともoneselfか。
 「向上する」は、improveか、go upか、それともmake betterか。いろいろ考えつくが、
 「人格が向上する」は、思い切ってシンプルに、「いい人になれる」と変換できる。

 「知性が顔に漂う」については、個別の単語が次々と思い浮かぶ。
 「知性」は、intellectか、intelligenceか、wisdomか、それともknowledgeか。
 「顔……」は、faceか、expressionか、それともlooksか。
 「漂う」は、is driftingか、is floatingか、それともappearsか。

 しかし、こんな単語をいくら組み合わせたところで、ろくな英文にはならない。「知性が顔に漂う」は、顔の表情をイメージして映像化すれば、「賢く見える」と、スッキリした表現が思いつく。これは国語力というより想像力の問題だ。

 問題文の出典は、五木寛之の『知の休日』である。これだけ削ったり簡略化すれば、当然、一流の作家の文体が醸し出す情緒や雰囲気は失われる。それでも肝心の情報の部分だけは残る。

 受験生は、たかだか数年の勉強で、ニュアンスや風情が英文に翻訳できるようになるなどと考えない方がいい。英作文は、単語を継ぎはぎしてできるパッチワークではないのだ。寄せ木細工の英文は、途中で空中分解を起こすのが関の山である。

 ●訳文のサンプル

 最後に、オリジナルの問題文と、書き換えた日本語文を並べ、それぞれの英訳を挙げておく。

 本を読むというのは、やはりその人の趣味、たのしみ、というふうに考えたい。本を読むことで人格が向上したり、知性が顔に漂ったりする、などと考えないほうがいいだろう。

 I'd like to think that reading books is just a hobby or a pleasure for a person. Perhaps we should not think that reading books improves our personality or that intelligence might show on our face. ――― 旺文社「全国大学入試問題正解」

 I'd like to regard reading books as a hobby or pleasure. We should not think reading books will enhance our character or give us an air of intelligence. ――― 教学社(赤本)

 読書は趣味であり楽しみである。読書でいい人にはなれないし、賢く見えるようにもならない。

 Reading a book is just a hobby or a pleasure. By reading a book, you can't become a better person, nor will it make you look wiser. ――― かつうら英語塾

2011年3月1日

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