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  あっ、まちがえた ─── 2011年センター試験 (英語)

 ●中学生レベル

 「あっ、まちがえた」、これは、センター試験のあと、私が決まってつぶやく言葉だ。受験英語の専門家なら、センター試験で間違うはずがないと思われている。しかし、実際はそうではない。1、2問、ときには3、4問ミスを犯すのが恒例になっている。自慢にも手柄にもならないが、今年は久しぶりにノー・ミスだった。センター試験は良問ばかりではない。ヘンな問題もたくさんある。

  次の2011年の問題を、文法と出題形式の両面から詳細に分析してみる。

 第2問─問2 下の語句を並べかえて空所を補い、文を完成させよ。

 "What's up with Jack? He seems so happy."
 "He applied for a new job, and (    )(  23  )
 (    )(    )(  24  )(    ) an interview."

 ①called   ②company   ③for   ④him   ⑤in    ⑥the 

 まず、選択肢にある単語のなかで、冠詞のtheと結びつくのは名詞のcompanyしかない。さらに、英文はすべてS + Vで成り立つことから、出だしは、the + company + calledで決まりである。したがって、( 23 )にはcompanyが入る。ここまでは中学生レベルである。

 ●called for か、called in か
 
 残りの単語は、for、him、inの3語だけだから、楽勝に思える。

 forとinを、an interviewの前に続けて置くと、名詞の前にforとinが並ぶことになり、かなり不自然に見える。そこで受験生は、forとinについて、どちらかがcalledの後で、どちらかがan interviewの前だろうと考える。

 通常、callがらみでは、以下のようにcall forを問うケースが圧倒的に多い。call inを問うケースはきわめてまれだ。

  • He called for help. 彼は助けを求めて叫んだ。
  • Did someone call for a doctor?  どなたか医者をお呼びになりましたか?
  • Mastering a foreign language calls for patience.  外国語の習得は忍耐が必要だ。
  • He's not well. You'd better call in a doctor. 彼は具合がよくない。医者を呼びなさい。

 熟語の意味がわからないとき、受験生は勘を頼りに、こうつぶやく。

   <call inなど参考書で見たことがない。call inを出題してくるよりも
    call forを出題してくる方が可能性が高いだろう。call forに違いない>

 だが、結論をさきに言えば、ここで選ぶべきはcall forではなくcall inの方だ。call inとcall forで、その並べ方は次の2通りに絞ることができる。

 The company called for him in an interview. その会社はインタビューで彼を必要とした。
 The company called in him for an interview. その会社はインタビューで彼を呼んだ。

 両者の意味の違いは微妙である。熟語がわかる受験生でも迷うだろう。どちらがベターかは、文脈から判断するしかない。前者を選ぶか後者を選ぶかは、国語力の差だ。

 ●called in him か、called him in か

 しかし、called inを選んだからといって、これで正解に行き着いたわけではない。動詞と副詞の位置関係についてはこんなルールがある。

 【目的語が名詞のときは、その名詞は動詞と副詞の間でも、副詞の後でもよい】

  [正] He put his coat on hurriedly. 
  [正] He put on his coat hurriedly. 
     彼は急いでコートを着た。
 【目的語が代名詞のときは、その代名詞を動詞と副詞の間にはさむ】

  [誤] He took his coat and put on it hurriedly. 
  [正] He took his coat and put it on hurriedly.
     彼はコートを手に取り、急いでそれを着た。

 したがって、問題文の場合、目的語はhimという代名詞なので、語順はcalled in himではなく、called him inとなる。

  [誤] The company called in him for an interview.
  [正] The company called him in for an interview.

 ●call in とは

 さらにcall inについて補足しておくと、英英辞典(Oxford Advanced Learner's Dictionary)ではこんな表記になっている:

    call somebody in
       or
    call in somebody

「人を招き入れる」という意味だが、このcall inの意味を理解するには、callは自動詞ではなく他
動詞であり、inは前置詞ではなく副詞であるという知識が必要である。

 逆に言うと、そういう知識があれば、call inを熟語として知らなくても意味は読み取れる。なぜ
なら、「VOCの構造から、『OとC』は『主語と述語』の関係にあり、O(him)がC(in)の状態になる
ように、V(call)という動作が作用する」と、論理的に考えられるからだ。

 要するに、第五文型(SVOC)の基本構造が把握できていれば、call somebody inが「人を招き入れる」という意味だということは容易に理解できる。

 ●出題者の頭のなかは

 ここで、出題形式に光を当て、そこから出題者の頭のなかを覗いてみる。

 ( 23 )でcompanyを入れるのは、中1の文法知識でしかない。一方、( 24 )にinを入れるには、高度な文法知識を要する。( 23 )と( 24 )では、その難易度には雲泥の差がある。

 ( 23 )を間違える受験生がいるとは考えにくい。かりにも大学受験生である。中1の文法につまずくわけがない。「両方が正解の場合のみ得点」という条件はあるが、大学入試レベルで( 23 )を問う必然性はどこにもない。

 では、なぜこれほど難易度に差がある問題をセットにしたのか。それはこんな理由からだろう。並べ替え問題は以下のように、問1~問3まで、3題ともすべて2番目と5番目の単語が問われている。

 問1 (    ) (  21  ) (    ) (    ) (  22  ) (    )
 問2 (    ) (  23  ) (    ) (    ) (  24  ) (    )
 問3 (    ) (  25  ) (    ) (    ) (  26  ) (    )

 問1~問3で、問2だけ問う箇所を変えると見た目のバランスが崩れる。そして、そのことを妙に勘ぐる受験生がいるかも知れない。出題者は「内容よりも形」「質よりも数合わせ」を考えたに違いない。受験生の英語力を計るよりも、出題形式の体裁を重んじたのだ。

 ●受験生はこんなことも考える

 call forかcall inかでさんざん迷うが、実は、設問形式からcall for もcall in も正解ではないことが見えてくる。

The23. companycalledfor24. himinan interview.
The23. companycalledin24. himforan interview.


 なぜなら、上記のようにcall forを選ぼうがcall inを選ぼうが、( 24 )の答えは、両方ともhimになる。「これでは、おかしい!」と、目先が利く受験生なら気づく。forかinかが問われなければならないのに、答えがhimではつじつまが合わないからだ。

 最初のthe company calledの3語の並びは決定だから、残りの単語は、for、him、inの3語だ。組み合わせのパターンは次の6通りだ。

  ①for + him + in  ③him + in + for  ⑤in + for + him
  ②for + in + him  ④him + for + in  ⑥in + him + for

 ここで、①と⑥は2番目にhimがくるので、上記の理由から「答えであるはずがない」と判断できる。

  ①for + him + in  ③him + in + for  ⑤in + for + him
  ②for + in + him  ④him + for + in  ⑥in + him + for

 残りは4パターンになる。そして、問われているのは2番目の単語だ。パターンを整理すれば、②③④⑤の4パターンのなかで、2番目にくる単語はinかforの2パターンしかない。したがって、( 24 )に入るのは、inかforのどちらかである。二つに一つだから、正解する確率は50%である。

 ●マークシート方式の宿命

 ( 24 )は、文法的に正攻法で考えると、かなり難易度は高い。今年のセンター試験・英語問題のなかでもいちばんの難問だと考えられる。それなら正答率がいちばん低かったのかというと、そうとは限らない。

 上記のように、受験生はありとあらゆる手がかりから解答する。そして本来の英語力とは無関係に、解答を割り出す。それは、マークシート方式の持つ宿命である。

 そこでは思考過程は問われない。どんな手順で考えようが、結果として記号が合いさえすれば、それでいいのである。一生懸命考えてマークを塗りつぶそうが、エンピツをころがして塗りつぶそうが、正解は正解なのだ。

 ここに取り上げた問題のように、文法的には難問であっても記号の配列に着目するだけで、50%の確率で正解できる。

 実際、そんな面倒なことを受験生はやっているのかといえば、答えはイエスである。文法などまったくわからない。知っている単語もほとんどない。かりにそんな状況でも、なりふり構わず得点しようとするのが受験生なのだ。

 ●「例の方法」

例の方法

 ○ 日本語として不自然な選択肢は不正解
 ○ 暗いイメージの選択肢ほどあやしい
 ○ 空欄と正解の配列順序は比例しない
 ○ 同じ選択肢が出続けるのは正解の証拠
 ○ 順序をもつ選択肢からは正解が見える
 ○ 出題者はうっかりホンネをもらす
 ○ 傍線部にもっとも近い選択肢は不正解


 「例の方法」は、'80年代に受験生のあいだで評判になった本だ。入試問題の多く(6、7割)が、選択肢からのアプローチだけで解けるという。私自身、何年か前にセンター試験の漢文問題を、「例の方法」のテクニックだけで全問正解したことがある。

 なぜ、そんなことが可能なのか? 出題者は、できるだけ「正解を隠したがっている」。その心理をウラ読みすれば、正解への有力な手がかりが得られる。そして、以下のように正解そのものを的中させることも可能だ。

 ■英語 下線部(3)の意味にもっとも近いものを、1~4の中から1つ選べ。

 1. one wants to share in a friend's joy
 2. one wants to share happiness with others
 3. one wants to consider himself happy
 4. one wants to express pleasure when happy

 【解説】「to share」で1・2が共通。「happy」「happiness」で、「2・3・4」が共通。「1・2」と「2・3・4」で共通するのは2。したがって2が正解。

 ■世界史 下線部⑤についてグプタ朝を建国したのは誰か。

 ア チャンドラグプタ
 イ チャンドラグプタ1世
 ウ サムドラグプタ
 エ チャンドラグプタ2世
 オ カドフィーセス1世

 【解説】この問題に世界史の知識はまったく不要。「チャンドラグプタ」で、「ア・イ・エ」が共通。「1世」「2世」の数詞で、「イ・エ・オ」が共通。そのうち「1世」で、「イ・オ」が共通。「ア・イ・エ」「イ・エ・オ」「イ・オ」で共通するのは「イ」。したがってイが正解。

 ●採点は一瞬

 マークシートの採点をテレビで見たことがある。答案の読み取り機は、意外と小さい。手提げ金庫ほどの大きさだ。答案シートを流し込むと、即座に採点され、吐き出される。そのスピードは、駅で自動改札口に差し込んだ切符が一瞬で飛び出てくるのと同じ速さだ。

 本番での緊張と知的格闘の結果が、あるいは、高校3年間の学習の到達度が、この一瞬で決まる。高校生活で、何に情熱を燃やしたかは問われない。どのように思考して解答したかも問われない。

 マークシートで大事なのは、塗りつぶしのミスを犯さないことである。その採点は、一瞬でそっけない。

2011年2月1日

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