勝浦英語塾では、英語指導歴30年のエキスパートが、大学受験英語を通して、30年後にも通じる、生き方と在り方とその方向性を伝えています。 

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  いい大学とは他人が行きたがる大学? ── 「生きる意味」

 日本の自殺者数は、1998年以来ずっと年間3万人を超えている。自殺未遂者の数はその2倍だといわれている。

 1:29:300の「ハインリッヒの法則」を当てはめれば、自殺願望者はその29倍の87万人。その予備軍は300倍の2,600万人。日本の総人口1億2,700万人で割れば、5人に1人が心の病に苦しんでいることになる。

 5人家族であれば1人が、10人程度の塾であれば2人が、40人学級であれば8人が深刻な悩みを抱えていることになる。決して人ごとではない数字だ。個々の人間が病んでいれば、グループが病み、やがてコミュニティが病む。

生きる意味



「生きる意味」はビッグなタイトルだが、
内容はいたって分かりやすい。
以下はその要略である。

 右肩上がりの経済成長のなかでは、他人が欲しがるものを自分も欲しがっていれば安心できる。


      ・いい大学とは、他人が行きたがる大学
      ・いい職業とは、他人が就きたがる職業
      ・いい会社とは、他人が入りたがる会社
      ・いい彼女とは、他人がうらやむ彼女
      ・いい結婚とは、他人があこがれる結婚

 ●他者が基準

 ここでの判断基準は「他者の目」であって、自分自身の感性でも頭でもない。他人と同じ欲求を持つことが大事であり、他人が歩もうとする人生こそが自分の人生となる。

 「他者の欲求を生きよ」というイデオロギーは、人に受け入れてもらう自分を作り上げる。色を消した自分、においを消した自分、透明な自分になることで、誰からも受け入れてもらえる自分を目指すことになる。

 その結果、「交換可能な自分」「どこにでもいる自分」となり、「かけがえのない自分」は失われる。

 経済成長のために、人は無記名なヒトとして簡単にリストラされる。いつも「見捨てられるのではないか」とびくびくしながら生きる。私たちは、ますます「人の目」を気にし、「人の評価」に思い悩む。

 ●数字への信仰

 日本のGDPは500兆円。英・独・仏、三カ国の合計に匹敵する。そこまで経済成長を成し遂げたにもかかわらず、それでも経済成長へと邁進しようとする。

 「経済成長への信仰」は、「数字への信仰」でもある。「給料がこれだけ上がったんだから」と、豊かさを年収で計ろうとする。テストの点数が80点の生徒と50点の生徒がいれば、80点の方がいいに決まっていると無条件に言ってしまう。

 ひとり一人が「生きる意味」を持つ固有の存在だということを無視して、「いい点数を取れ」「いい学校に行け」と言い続けることは、他者の人生に対する根本的な尊厳を欠く。

 数字は分かりやすいし、曖昧なところがない。しかし、それは「人と人のコミュニケーション」を犠牲にし、「世界が多様である感覚」を失わせる。

 ●薄っぺらなコミュニケーション

 「数字」はコミュニケーションをとてつもなく薄っぺらなものにする。「年収は○○です」。「どこにお勤めですか」「○○商事です」。「どこの大学に行ってるの」「○○大学です」。

 年収や、会社名や、大学名が分かったからといって、「どんな仕事をしているか」「何を生きがいにしているか」「いまどんなことに悩んでいるか」は分からない。

 数字による意味づけは瞬時に決まり効率的だ。しかし「生きる意味」は瞬時には決まらない。時間をかけながら意味を探り出していく、そんなコミュニケーションは効率的ではないが、そこにこそ生きることの豊かさがある。

 ●中心は至るところに

 私たちが苦悩しているとき、その苦しみの声を聴いてもらった体験は、確実に自分自身と世界への信頼を深める。世界は私の声を聴いてくれているという実感を持つ人は、その世界を破壊しようとは思わない。

 世界の中心は私自身にある。そしてあの人もまた世界の中心を生きている。世界には至るところに中心がある。その中心どうしが互いを尊重し合う社会への道がそこにある。

 ひとり一人が自分の人生の創造者となるよう「生きる意味」を再構築していくことは、「私の尊厳」と「あなたの尊厳」をともに回復していく歩みなのである。

2010年8月29日

 
「生きる意味」の出版は2005年1月。翌年、2006年の大学入試の小論文や国語の問題で、40以上の大学が同書を採用。入試出題率第1位の本になった。
                 
         上田紀行著「肩の荷をおろして生きる」PHP新書より

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