Two were one too many.
Two were one too many. ─── 千葉大2009年入試問題
入試問題に目を通していたら、わずか6語からなる短いセンテンスだが、「おやっ」と思う難問が目にとまった。以下の下線部分を和訳する問題だ。
問題文: A close friend of mine (call him Harry) once found himself with two girlfriends, both of whom he loved, desired, and admired. Two, however, were one too many. Confused by contradicting emotions and unable to make up his mind, he recalled what Benjamin Franklin had once advised a nephew in a similar situation: (以下省略) |
旺文社・2010年受験用・全国大学入試問題正解・英語・国公立大編より
これを塾生に出題したら全滅だった。とりあえずtoo manyを取り除いて考えてみると、
Two were one.「1は2であった」
となり、全く意味不明の文になってしまう。こんどはoneを取り除いてみると、
Two were too many.「2では多すぎた」
となる。前後の文脈からtwoはtwo girlfriends、too manyはtoo many girlfriendsの意味だろうと容易に推察できる。もしそうなら、「恋人が二人では多すぎる」と、訳出するのはいたって簡単である。しかし、実際にはoneがあり、文法的にはかなりやっかいな英文である。
似た構造の英文が、「英文標準問題精講」の練習問題【1】にある。
Habit is ten times nature.
「英標」では、解説らしき解説もなく、「習慣は天性の十倍も力強いのだ」と訳されている。この文も、ten timesを取り除けば、
Habit is nature.「習慣は天性だ」
となり、きわめてシンプルな英文になる。
oneやten timesは、いったい文中でどんな働きをしているのだろうか。次の同等比較の文を例に、その働きを考えてみる。
①This bridge is as long as that one. この橋はあの橋と同じ長さである。
②This bridge is twice as long as that one. この橋はあの橋の二倍の長さである。
③This bridge is nearly as long as that one. この橋はあの橋とほぼ同じ長さである。
①は単純なas~asの同等比較の文。
②はas~asの前にtwiceを置き、二倍の長さを表す。
③はas~asの前にnearlyを置き、ほぼ同じ長さの意味。
②と③を対比させてみると、twiceはnearly(副詞)と同じポジションを占めていることから、twiceはnearlyと同様に副詞的にas long as that oneを修飾していることが理解できる。
He is ten years old.という文では、”ten years”という数詞はoldを副詞的に修飾している。中1で学習するセンテンスだが、文法的には高度だ。two weeks agoでも、”two weeks”という数詞はagoに対して副詞的に作用している。
したがって、問題文の数詞oneもtoo manyを副詞的に修飾し、意味は「二人では一人多すぎた」となる。
数詞が、次にくる名詞や節に副詞的に作用することを理解していないと、次のような誤訳が生まれることになる。高1レベルの学生がよく犯す誤りだ。
He got up ten minutes before the sun rose.
× 彼は10分前に起きて、日が昇った。
× 彼は10分で起きて、その前に日が昇った。
○ 彼は日が昇る10分前に起きた。
ten minutes(数詞)は、before the sun rose(節)を修飾している。
全文訳: 私の親友(ハリーと呼んでおこう)には、気がつくと二人の恋人がいて、彼はその二人を愛し、切望し、敬服していた。しかし、二人では一人多すぎた。矛盾する感情に戸惑い、心を決めかねていた彼は、ベンジャミン・フランクリンがかつて、同じような状況にあった甥(おい)に与えた忠告を思い出した。 |
2010年11月13日