『36歳から英語で仕事ができるように……』

オンライン英会話のすすめ(6)

●300日で英語はしゃべれるようになる

『36歳からオンライン英会話をはじめたら英語で仕事ができるようになりました』(嬉野克也著 KADOKAWA)は、オンライン英会話に二の足を踏んでいる人の背中を押してくれる。

著者は36歳、関西大学英文科卒。英語とは無関係な部署にいた会社員。オンラインで英会話を学び、現在は、外資系企業を担当し日常的に英語を使っている。

外国人からかかってきた電話を受けたり、数カ国の人たちが参加する英語の会議を進行したりと、帰国子女や、長期の海外生活経験者に混じって英語を使った仕事をしている。

本文にこんな記述がある。

「グローバル化といっても僕には関係ないな」「この歳から英語なんてできるようになるわけないし」「もしできるようになっても、使う場所なんてないし」「そもそも勉強も嫌いだし、怠け者だし、三日坊主だし」「そんな僕がオンライン英会話をはじめたところ、今まで決して続けることのできなかった英語学習を、2年以上継続し、TOEICのスコアは900点を突破、その後、英語で仕事ができるようになった」

著者が英語で仕事ができるようになるまでに、オンラインレッスンを何回受けたかを計算してみた。1回25分のレッスンを週3回のペースで受講し、それを2年間続けたとあるので、300回のレッスンを受けたことになる。時間にするとおよそ150時間。

週に3回ではなく、週に7回、すなわち毎日受講すると300回は300日で達成できる。約10ヶ月間、毎日欠かさずオンラインレスンを受講すれば、英語で仕事ができるようになるという。

●英会話学校に30年間通い続ければ

週に1回英会話学校に通い、60分のグループレッスンを受けたとする。生徒が10人いれば1人当たりのしゃべる時間は6分。150時間を6分で割ると1500回になる。これは、週に1回英会話学校に通い、それを30年間続けることを意味する。月謝が8000円だとすれば、その費用は計300万円になる。一方、オンラインレッスンは1回当たり200円だから、300回分のコストはわずか6万円。電車に乗って通学する必要もない。

「英会話学校に30年間通い続けたら英語で仕事ができるようになりました」と言えば、それを疑う人はいないだろう。10ヶ月間オンラインレッスンを継続すればそれに匹敵する。

1回、2回と続けても300回はずっと先の話。著者は、とりあえず100回を目指せとアドバイスする。100回を受講したあたりで、「お、英語でけっこう話せてるかも、という手応えのようなものがあり、ようやく自信が持ててきた」とある。

挨拶ぐらいしか言えなかった状態から、「近況報告」「自分の仕事の説明」「冗談を言って笑いを取る」「相手の冗談が理解できて笑える」「ニュース記事のディスカッション」などが、なんとかできるようになっていた。他の人の例からも、この「100回で効果あり」は、一つの基準になると著者は言う。

私が受講している『レアジョブ』でも、「受講レッスン数が90回を超えると顕著なスコアの伸びがある」と指摘する。同社のウエブサイトではこんなグラフが載っている。

 

●シグモイド曲線

ある回数を超えると能力が飛躍的に伸びることは「量質転化」の法則にも当てはまる。一定の量を超えるとその質が変化する。努力はしているのに進歩が感じられないことはよくある。自分には才能がないのかもと悩む時期でもある。しかし、しんぼう強く努力を続けていけば、ある日、「けっこう実力がついたかも」と実感するときがくる。この回数が、本書の著者は100回、レアジョブのサイトでは90回と言っている。

「シグモイド曲線」はS字型のカーブを描いた曲線で、「S字型学習曲線」や「S字型成長曲線」と呼ばれたりする。やってもやっても進歩を実感できない停滞期が続いたあと、目の前の霧が晴れたように急激に伸びを感じる時期がおとずれる。

その成長期がしばらく続いた後、再び停滞期がおとずれる。プロのレベルに達するには、このS字型成長曲線を3回繰り返す必要があるともいわれている。

 

●「日常会話ぐらいは」のまやかし

日本で生活している限り、英語を話す機会も必然性もない。そんな日本という環境の中で英会話を習得するのはとてもむずかしい。英語教師であったりすると、「日常会話くらいできなくては」と、常に強迫観念にかられ、周りからのプレッシャーにさらされる。

世間は「日常会話ぐらい」という言い方をするが、日常会話ぐらいむずかしいものはない。話の流れで、さまざまな話題が飛び出すのが日常会話。恋愛、健康、病気、政治、経済、物価、趣味、スポーツ、科学技術、環境問題、テレビ番組、お笑い、ニュースと、その幅は無限に広がる。

日本人が英語がしゃべれないのは、英語教育のせいではない。国民性でもない。英語をしゃべる必然性も、その環境も日本という国にはないことが何よりも大きい。

別の言い方をすれば、「日常的に英語をしゃべる仕掛け」さえ手にすれば、これまで受けてきた英語教育をベースに英語は必ずしゃべれるようになれるということ。これまで600回あまりのオンラインレッスンを受けてきて、そのことを確信している。

●英語をしゃべる仕掛け

「日常的に英語をしゃべる仕掛け」とは、毎日欠かさずオンラインレッスンを受講することである。オンラインレッスンを始めて1年9ヶ月になる。今では毎日のレッスンが生活の一部になり、ルーティーンになっている。自分の英会話上のミスや改善すべき点はいくらでもあるが、毎日の会話は着実に「無意識にしゃべる自動化」に向かっている。毎日欠かさず受講するだけで会話力が向上していくのだから、ある意味こんな楽な仕掛けはない。

私は去年レアジョブの株を買った。きっかけは株主になると株主優待で1ヶ月分の月謝がタダになるからだった。しかし、今では株主として会社自体の成長を応援している。オンラインレッスンという画期的な機会を提供してくれ、英会話のトラウマから解放してくれた同社には心から感謝している。

英会話の呪縛に苦しんでいる人は、ぜひオンライン英会話にチャレンジして欲しい。計り知れない恩恵と可能性を手に入れることになる。

2019年7月6日