ワーキング・ボキャブラリーが増えていく

オンライン英会話のすすめ(8)

●英単語の「定義」と「例文」

私は、レアジョブの教材、DNA (Daily News Article)のUnlocking Word Meanings(単語の意味を解き明かす)が気に入っている。当日のニュース記事を読む際の参考になる5つの単語の「定義」と「例文」が載っている。この5つの単語の「定義」と「例文」を暗唱するのが楽しい日課になっている。なぜ楽しいかというと、自在に運用できるワーキング・ボキャブラリーが日々着実に増えていくのが実感できるからだ。

①suspected (adj) – referring to something that is believed to have caused a bad effect
Example: The suspected cause of the disease is the dirty river that runs parallel to the town.

②afire (adj) – burning
Example: The firefighters quickly responded when they heard that a house was afire.

③thud (n) – a loud, dull sound made when something heavy falls
Example: Her expensive bottle of perfume fell to the floor with a thud.

④commotion (n) – a period of confusion
Example: The fire alarm went off and caused a commotion inside the building.

⑤wreak havoc (idiom) – to seriously damage something
Example: The typhoon wreaked havoc on the houses.

2019年9月6日付けDaily News Articleより

●覚え方

当初は、テキストの余白に日本語訳をメモって、その訳を見て英作をしていたが、日本語訳を書くのが面倒で、すぐに止めた。日本語を介さずに、英文を英文のまま覚えた方が手っ取り早い。

暗唱は、1文ずつ完全に覚えてから次に進むのではなく、①から⑤を1ユニットとして繰り返す。まずは、単語のdefinition(定義)を①から⑤まで10回くり返す。短文が5個だからそれほど負担ではない。完璧さにこだわらないのがコツ。ゆるゆるの暗唱で、ザーッと繰り返しているうちに徐々にマスターしていける。

次に、①から⑤の例文(Example)を同様に繰り返す。2、3度くり返すと、出だしの単語をちらっと見るだけで、残りのセンテンスの続きはスムーズに口から出てくるようになる。これも念のため10回くり返す。

NHKの『ラジオ英会話』で、次の重要表現を「一息5回で言ってみよう」というコーナーがある。これが意外と効果がある。とにかく口を動かして声に出すことで英文がどんどん身につく。10回という回数はこんなところから来ている。

●英単語を制覇する

5つの単語の「定義」と「例文」がマスターできると、自分で独自の英文を作れるようになる。新たな単語が自分のものになり、自在に操れる自信が生まれる。自分でオリジナルの英文を創作して、ひとり悦に入っている。

あるとき、チューターの先生に5つの単語を使ってそれぞれオリジナルの英文を作れと言われたことがある。間髪を入れずに披露したら、親指を立てて“Cool!”のコメントが返ってきた。

英語で英単語を定義することに慣れてくると、一定の型があることに気づく。形容詞なら「describing something that is~」。名詞なら「a place that is ~」とか「an act that causes~」。動詞なら「to say~、」とか「to do~」。

このように英英辞典の説明形式に慣れてくると、ものを説明するときには、どういう表現形式をとるといいかが分かってくる。説明能力が向上すると、相手にモノをたずねられたときの説明に苦労しなくなる。

また、あるモノのイメージが頭のなかに存在していても、英単語として口に出すことができないことがある。そんなときは、「緑の固い皮に包まれ、中の果肉は赤くてジューシー、黒い小さな種がたくさんある果物は?」と相手に聞けばいい。watermelonとすぐに教えてくれる。英英辞典の説明にはムダがない。英英辞典を日常的に使うと簡潔な表現形式が体得できる。個人的にはオンラインの『LONGMAN』を一番よく使う。よくできた辞書で、単語にも例文にも音声ファイルがついている。発音記号が読めなくても、発音やアクセントに迷うことはない。

昔、東大の入試に、「三日坊主」を英語で説明せよという問題があった。東京外大では、「図書館」「スチュワーデス」「動物園」「俳句」を英語で説明せよという問題があった。答えは英英辞典を引けばすぐに分かる。ただし、「三日坊主」と「俳句」については、その概念がハッキリつかめてないと英語化するのは難しい。

「実用英会話」とは、英英辞典の表現形式を身につけることであり、「旅行で」とか、「税関で」「空港で」「ホテルで」と、場面ごとにマニュアル化された例文を暗記することではない。そんなものは、何がどう展開するか予測できない実践の場では役に立たない。

●英単語と日本語の違い

ある塾生が、英作で「キューリー夫人が元素を調べる」で、「調べる」を「investigate」と英訳していた。FBIが「犯罪を調べる」のが「investigate」。化学者が「元素を調べる」のは「research」「study」。学生が「辞書を調べる」は「consult a dictionary」

電子辞書で日本語の単語を打ち込んで、出てきたものが知りたい英単語だと安易に考えているとこんな間違いを犯す。

「猫の手も借りたい」は、「猫」「手」「借りる」「欲しい」をつなげば「I want to borrow cat’s hands.」となるが、簡単に言えば、「I’m very busy.」のこと。「彼女は顔が広い」は「Her face is wide.」ではなく「She has a lot of friends.」

遠距離恋愛のカップルが空港で別れるとき、「I’ll miss you.」と言うが、「あなたと会えなくなって寂しくなる」と訳すよりも、「I’ll miss you.」=「I love you.」と、英文を英文で理解し直した方がしっくりくる。

夏目漱石は、「I love you.」を「我、なんじを愛す」と弟子が訳しているのをたしなめて、「月がとてもきれいだ」と訳したという。明治時代には「愛」という欧米の概念はないから、翻訳に苦労したのもうなずける。

●DNAで英英辞典になじんでいく

英英辞典がいいのは分かっていても、大部分の人にとっては英和辞典の方が手っ取り早い。私自身も、英英辞典で意味がしっくりこないときは、さっさと英和辞典で確認している。自分にとって過度に負担にならない方が長続きする。

レアジョブのニュース記事(DNA)は毎日配信される。そこに載っている新しい単語の「定義」は、英英辞典による「定義」だから、英文による英単語の説明に毎日触れることになる。英英辞典を使う習慣がなくても、英文の「説明形式」や「表現パターン」が自動的に身につく。ネイティブの先生と記事について英語でディスカッションするのだから、新しい英単語も英文で理解しておいた方がレッスンの際に都合がいい。

●英文で言いたくてうずうずしてくる

オンラインの英会話を始めてほぼ2年になる。習得してきた単語数を計算すると、5(個) × 365(日) × 2(年) = 3,650個。1つの単語に「定義」と「例文」のセンテンスがついているから、7,300の英文。これを10回ずつ暗唱すると延べ7万3千センテンス。

これだけ回数を繰り返すと、自分でも思いもしなかった変化が起きる。ふとしたことで英文が流れ出すことがある。

「低所得者層」という言葉を聞くと「low-income family」と脳が勝手に翻訳する。「メタボ」という言葉を聞くと、「metabolism」が頭に浮かび、続けて「Metabolism is the chemical processes by which food is changed into energy……」と英文が流れ出す。「地球温暖化」と聞くと、「Global warming is caused by emission of carbon dioxide……」と自動的に頭の中で解説が始まる。周りに人がいなければ、ひとりでに口が動きだす。

Practice makes perfect.を実感している。

2019年9月7日