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移民は英文をこう読んでいる

by 勝浦 郡章

●大まかに把握する

地元の県立高校は、冊子の中で、「英語の学び方」についてこう解説する。

まず、英文にざっと目を通し、大まかな内容を把握する。わからないところがあっても辞書は引かず、文脈から推測する。これが最も大切な作業であり、想像力を鍛える訓練になる。次に、パラグラフ(段落)のトピックセンテンス(主題文)に注目する。最後に、辞書を引き、すべての文意を明らかにする。―『学習ガイドブック』より

この英文の読み方について異議が2点ある。一つは、「想像力を鍛える」について、もう一つは、「トピックセンテンス」について。

●想像力を鍛える

認知バイアス(cognitive bias)は、物事の判断が、直感や経験にもとづく先入観によって非合理的になることをいう。簡単に言えば、認知バイアスとは、思い込みのこと。われわれが日ごろ頻繁に犯す誤りでもある。「えっ……じゃなかったの?」「てっきり……だと思っていたのに」

雑誌にこんな記事があった。

深夜、携帯メールの着信音が軽やかに鳴った。画面に浮かぶ、たった2行の文面。「ずっと好きでした。付き合ってください」

前触れもなしに突然、訪れた告白メール。佐枝子さん(29)は驚きと不可解さで、目がクギ付けになった。メールの発信者は、1年ほど前に異業種交流会で知り合った堅一(34)からだった。

堅一とは、毎回5、6人程度が集まる交流会の仲間の一人として、仕事の情報を交換したり、息抜きで飲みに行ったりする仲だ。好印象は抱いていたが、それ以上、「男」を意識したことはなかったし、堅一も自分に好意があるようなそぶりを見せたことなどもなかった。

相手の真意を測りかねたが、心は揺れた。どう返信していいか、3時間以上も迷った揚げ句、「友達だと思っていたんだけど……」と、若干含みを持たせたメールを送ってみた。すると、わずか1分ほどで返信があった。それも2行だけだった。「誠に申し訳ありませんでした。なかったことにしてください」

それから3か月近くたつが、堅一から連絡はない。月に1度の交流会にも、彼は姿を見せなくなった。

Yomiuri Weekly 2005.10.16

女性がメールを受信したのは深夜。かりに午前0時としておこう。3時間以上も迷ったあげく、返信メールを送る。午前3時を過ぎている。

男性の方は、まんじりともせず午前3時まで返事を待っていたことになる。そして、「友達だと思っていたんだけど……」の一言に、ふられたと即断してしまう。

女性の方も、まんざらでもないことがうかがえる。たった1行の返信に3時間もかかっている。それに、交流会に現れなくなった彼のことが気になってしかたがない。

こんな男女の行き違いやすれ違いが、今日も、職場で、学校で、日本中いたるところでくり返されている。

人と人との関係は一筋縄ではいかない。こうした行き違いは、少ないに越したことはない。思い込みや決めつけは、排すべきものであって、助長すべきものではない。

●虚心に読む

英文を読む際も、自分勝手な思い込みを排し、先入観を持たずに読むのが正しい読み方である。

英文読解は、「想像力を鍛える訓練」などでは断じてない。正当な文法ルールにしたがって、虚心に英文を読み解いていく知的な言語活動である。

昨今の文法軽視の読み方では、大体こんな意味だろうと推測して読むしか術がない。

「ざっと目を通し、大まかな意味を把握する」は、それがすべてであって、それ以上のものは何もない。そういう読み方しかできない人間の方便である。

「辞書を引き、すべての文意を明らかにする」とあるが、辞書を引いても、読めないものは読めない。辞書を引いて、それで英文が読めるというのなら、学校の授業も、教師もいらない。

●知的な格闘

『英文標準問題精講』(原仙作)には、英米のそうそうたる作家のナマの原文が220編収められている。累計部数が1千万部を超える大ベストセラー。ためしに、そういう読み方で、同書のどの一節でも読んでみるといい。

英文と訳文を照らし合わせても、なぜそんな日本語訳になるのかがわからない。これが今の平均的な英語学習者の読解力である。

英文を読むということは、知的な闘いである。英文との格闘をとおして論理的な思考力が身につき、言葉への感性が研ぎ澄まされる。結果的に、母語としての日本語力が磨かれる。そして、それが日々の言語生活を豊かにしてくれる。言語生活が豊かになるということは、われわれの人生そのものが豊かになることである。

英文を読むということは、想像力を鍛錬する場ではなく、思考力を鍛錬する場なのである。

●学んでないから推測するしかない

コロナ禍の前、家族で上海旅行をした。個人旅行なので、上海国際空港からダウンタウンまで地下鉄を利用した。自動券売機は、日本のものとはずいぶん勝手が違う。中国語表記の掲示板から、馴染みのある漢字を探し出し、たぶんこうやって買うんだろうと推測するしかない。

英文でも同じことが起こる。英文法を学ばないから、単語の意味に頼る。単語がどういうルールで並んでいるかを知らないのだから、大まかに意味をつかむしかない。そこで、英文を読むことは想像力を鍛える訓練だ、となる。

米国は人口の13%が移民だと言われている。移民は、まともな英語教育など受けていない。それでも英語で生活せざるを得ない。だから、想像力で理解するしかないのである。この読み方は、「移民の読み方」に他ならない。

●文法軽視の源流

(故)渡部昇一・上智大学教授は、『英文法を知っていますか』(文春新書)のなかで、こう指摘する。

― ミシガン大学の構造言語学や、その応用であるオーラル・アプローチ(口頭教授法)は、文献記録のないアメリカ・インディアンの話し言葉、つまり話し言葉しかない民族の言語を記述することから始まった。このオーラル・アプローチは、1950年代に日本の英語教育にも導入され、「英文法」が軽んじられ、敵視される風潮が生じた。

オーラル・アプローチは、ヒスパニック系の移民に英語を教えるために用いられ、難しい文章を読むことも、立派な文章を書くことも目的としていない。インディアンのように文献のない民族の言語を分析した「幼稚なおしゃべりのための文法」である。伝統的規範文法とは根本的に違うのである。―

●パラグラフ・リーディングのまやかし

ヘミングウエイの『老人と海』(The Old Man And The Sea)は、100ページあまりのペーパーバック(文庫本)。この本は章立てにはなってない。段落はあっても、段落をまとめた章見出しは付いてない。

したがって、ここでは、「中心となるパラグラフ(段落)を見つけ、トピックセンテンス(主題文)に注目する」という読み方は通用しない。

小説を読んでいて、かっこいい台詞や、気の利いた言い回しに注意が向くことはあっても、トピックセンテンスを見つけようと思って読む読者はいない。

そもそも、「ざっと目を通し、大まかな内容を把握する」という読み方で、いきなり、これがトピックセンテンスだと指摘する芸当など誰にもできない。

パラグラフ・リーディングは、「小説やエッセイを読むときの読み方を言っているのではない、評論文やニュース記事を読むときの心構えを言っているのだ」、という反論があるかもしれない。

しかし、ニュース記事は、はじめから「大見出し」「中見出し」「小見出し」そして「本文」の構成になっている。このブログも同じである。見出しをみて、内容に興味がわけば本文を読めばいい。ただそれだけである。おかしな技巧などいらない。ふつうに読めばいい。

パラグラフ・リーディングの解説書には、論理マーカー、談話マーカー、逆接マーカーなど、耳慣れないフレーズが並ぶ。こんなフレーズの意味など知らなくても困ることはない。文章は、普段通りに読めばふつうに理解できるようになっている。

まともに文章が読めれば、パラグラフ・リーディングなど不要である。逆にいえば、まともに文章が読めないから、こんな奇妙な読み方をする。

(故)渡部昇一教授が指摘するオーラル・アプローチと同じように、パラグラフ・リーディングは、英語が読めない移民救済のための読み方である。

映画を観るのに、まず数倍速の早送りで観て、おおまかにあらすじをつかむ。それからゆっくり鑑賞する。こんなかたちで映画を観ようと、私は思わない。

2021年12月1日

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